１１･失敗作 ページ13
──嗚呼。
その言葉を聞いた途端、私の中で形容しがたい感情が生まれた。
いわく、怒り。いわく、憎悪。もしくはそれよりもおぞましい何か。
もしここに居るのが私ではなく、あの紺色の髪を束ねた少年だったら。その言葉を肯定することが出来ただろう。
でも生憎、私は私でありその言葉を肯定することは出来なかった。
私は悪霊(デモナス)ではない。強いて云うのなら、失敗作だ。
私は返答する。
声ではなく、言葉でもなく、剣で。
黒い念紋が兵士の銃を真っ二つに叩き折る。同時にサイミアで死体の刀鞘から剣を抜き取り、後方から兵士の胸元を貫いた。
兵士は仮面の隙間から血を吹き出して倒れる。
私はサイミアの力を消した。役目を終えた剣がカラン、と音を立てて地面に落ちる。
泥クジラには悲鳴やら銃声やらの喧騒で溢れかえっていたけど、何故だかその剣の落ちる澄んだ金属音がやけに耳に響いた。
私は奇妙な静けさを感じていた。
人を殺した後にしては、少し似つかわしくない静けさ。それは少しだけ孤独に似ていた。
｢……おねえちゃん｣
ふいに酷く弱々しい声がした。一瞬、どこから声がしたのか判らなかったが、すぐに理解する。
私が支えていた少女だ。まだ息があった。
｢おねえちゃん、ごめんね｣
｢……話さない方がいいよ。今医務室に｣
幸い、少女が撃たれていたのは肩だ。後遺症は残りそうだが、致命傷ではない。それでも血を流し過ぎると危険だ。
既に血にまみれた服の裾を裂いて、包帯代わりに肩に巻き付けて止血する。
痛みは相当だろうが、我慢してもらうしかない。
｢……おねえちゃん｣
｢なに？｣
ふと頬に何かが触れた。少女の白く細い指が頬に触れる。その指先が赤く染まった。私の頬に血が付いていたからだ。
彼女は悲しそうな顔をして、また弱々しく呟いた。
──｢泣かないで｣
聞き間違えでなければ、確かにそう云った。
私は右手で自分の頬に触れた。そこでようやく自分の頬を何か滴が伝っていることに気付く。
私は泣いていた。
私は驚いた。何故泣いているのか、自分でも理由が判らない。まったくもって心当たりがない。
しばらく呆然としていたが、すぐに思い直して少女を抱え上げる。そんなことはどうでもいいのだ。今は。
私が医務室に彼女を届けた頃には、涙は渇いていた。
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猫目 - 今更ながらコメント失礼します！同じく私もシュアン推しなので見つけたときめっちゃテンション上がりました！見ていらっしゃるかは分かりませんんが更新応援しております(^^) (2019年3月26日 20時) (
レス) id: 619380b1ab (このIDを非表示/違反報告)
りぃふ - はじめまして。今更コメント失礼します！私はクジ砂中でシュアンがとても好きなので、この小説を見つけた時はすごく嬉しかったです！このお話のおかげで今だいぶシュアン沼にハマってます…笑お忙しいとは思いますが、更新楽しみに待っています。(*^^*) (2018年6月24日 19時) (レス) id: f3d7bfc71d (このIDを非表示/違反報告)
なつみん - るりさん» ありがとうございます！同士嬉しいです！最近滞り気味ですが、時間を見付けて更新します！ (2018年2月20日 17時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
るり - 初めまして！私も団長さんが好きです！とても良い設定、話で好きになりました。これからもがんばってください続き待ってます (2018年2月16日 17時) (レス) id: 1a80d02d72 (このIDを非表示/違反報告)
なつみん - 裕貴さん» 裕貴さん、はじめまして！私も団長さんが一番好きなので、そう言って頂けると嬉しいです。皆様のコメントを励みに、これからも頑張ろうと思いますので、どうぞよろしくお願いします！コメントありがとうございました！ (2017年12月22日 6時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつみん | 作成日時：2017年12月17日 16時
