くじら一家の末っ子くん part2 (ページ11)

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くじらが57匹ページ11

それから俺たちの何人かは船を別々に別れた
エースのいるこのモビーディック号にはおれとコタツ、ウォレスなどだ

『へぇ、根無し草さん医者なんだね』

「…根無し草さん、って呼び方やめてもらえるか」

『名前教えてくれないんだもの。仕方ないよ』

にこにこと笑い続ける少年A
このまま根無し草さんとよばれつづけ白ひげ海賊団の他のクルーにそのあだ名の由来を聞かれおれの構想メモを再び読み上げられる未来が見えたのでおれは

「……デュース、だ。マスクド・デュース」

名乗ることにした
エースから貰った、海賊のおれの名前を

『それ偽名？』

「…海賊としてのおれの名だ。おれはいつか冒険記を書くんだ」

余計なことを口走った。
そう思い口をつぐむとAは笑う
なんだ、おれを笑うのか？と思ったが違った

『いつか読ませてね、デュースさんの冒険記！』

Aはどこまでも純粋に笑う
エースもそうだが、何故こんなに純粋な笑みを浮かべられるのだろうか
おれにはよくわからなかった

「……おれは医学生崩れだ。こんなおれでも役に立てるのか」

『立てる立てる！俺たまに医務室の手伝いとかするけどさ、全然知識ない俺でも立てるから！
それにうちの船医達もかなり怪しいよ～、まあ、海賊の船に乗るくらいだからね』

気にしなくても大丈夫！と背中をバシバシ叩かれた
本当にどこにそんな力があるのか、背中がまたヒリヒリ痛む気がした

『ねーちゃんー？』

再び医務室のあるところに戻るとAは扉を明けそう呼び掛けた
すると超ミニスカートに豹柄のハイブーツをはいたセクシーすぎるナースが数名現れた

「あらAじゃない」
「やーんAの頬っぺたほんとぷにぷに！」
「ほんとうらやましい！」

『やめふぇよ』

もにゅもにゅとすぐさま囲まれて頬を揉まれるA
ナースの一人がおれにようやく気づく

『この人、しばらくうちの船医やってもらうんだ！医学生だったんだって』

「…卒業は、してないんですが」

「あら、かっこいい」
「若先生ねぇ！」

どうやら、受け入れてはもらえるらしい
ひと安心だ

『じゃ、俺いくね、なんかあったらいってね』

「A今度また服着てよ」
「そうよー」

『それはやだ！！』

なんて会話をナースとしてAは去っていった