くじら一家の末っ子くん part2 (ページ50)

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くじらの別れページ50

その日は雨だった、それをみてAはお空が泣いてる、と呟いた
甲板でひとり空を見ていたが、上から傘がAをおおった

「…風邪引くぞ」
『いぞー』

ピンクの着物ではなく、何故か黒い服を着たイゾウをAは見上げた

『いぞー、かぁーさ、は？』

ここ最近、いつも聞くAの質問に思わずイゾウは傘を放り出してAを抱きしめた

『いぞー？』
「…お前の母さんは……これから遠くに行っちゃうんだ」
『とーく？あえる？』

会話がスムーズになってきたAはもう3歳になった
毎日母のいる部屋に向かった、けれど会えなかった
毎日、毎日毎日……会えなかった
同じ船にいるのに会えない。
なら遠くにいってしまったらもっと会えないんじゃ？
子供ながらにそう考えて、イゾウの腕から抜け出したAは母を探して走った
お部屋にもいなくて、どこにいるんだろうかと探した
そして見つけたときには、その小舟は出ていた

『かぁーさ！！』
「A…」
『ね、なんで？かぁーさ…！』

マルコがぎゅぅと抱きしめた
小舟は進んでいく、カルミアと彼女を囲むように沢山の植物を乗せて

カルミアは死んだ
病気だった

弱っていく姿を見せたくなくて、愛する息子と会わないことを選んだカルミア

遠ざかっていく母と、もう会えないとどこかで知ってしまったAは手を伸ばした、知っているはずなのに、会いたくて会いたくて必死にかぁーさ！かぁーさ！と呼び続けた

これが、末っ子のはじめての別れだった