くじら一家の末っ子くん part2 (ページ42)

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くじらが88匹ページ42

風を切る音が響いた
自分を守るように奮う鞭に手出しが難しい二人は距離をおいて、様子をうかがう

「…さて、どうするか」
『うーん、じゃあ』

耳かして、といい作戦を伝え、サボにあるものを渡すとAは駆け出した
ハコは危険だからと離れたところへ置いているため持っている武器は古い小刀だけ

それを握り直し、敵に近づく

「(刀に、武装色…！)」
『(なんとか……！！)成功…！』

身を守る術と、能力者対策の自身への武装は習えども
武器に武装色を使うことは、まだまだというのが現状だ

これは武器ではない、自分のからだの一部だと、自分に言い聞かせ保つ

襲い来る鞭を切る

見聞色を用い、避けながら切る

しかし、読みきれず、鞭は帽子を飛ばし、Aの頬を切る
それでも、止まらない
止まることなく、刃を奮う

足を切られても、腕を切られても

ﾊﾟｷｯ、

武装色が維持できずに、刃が折れる音がした
しかしその時には敵の鞭もずたずたになっていて鞭としてはもう機能しないだろう

「ふ、ふふふふふふ…！折れた、折れた！！
武器がおれて、お前の仲間は、逃げた！！！
敗けだ！お前の敗けだ！俺は勝ったんだ！

俺はまだ！！返り咲けるんだ」

周りには敵のいうように、サボとハコの姿はなかった
返り咲ける、その言葉にAは折れた刃を拾いながらたずねる

『……なにに』

短い言葉だが、そこにはなんの感情もないように思えた

「人身売買事業さ！！知ってるか、人身売買は儲かるんだ！需要があるからな！！
お前も売ってやる！ちと傷ついたが、それ顔だ。高く売れ」
『黙れ』

ﾌﾞﾜｯ、という効果音が似合うだろうか
汗が一気に吹き出したのを男は感じる
重々しい何かが自分に襲いかかる
手から鞭を離してしまった男は、そのまま膝をついた

「さぁ、覚悟しろ」

いつの間にか自身の後ろにいたサボが男を拘束した

「っ、な」
「俺は逃げてなんかいないさ。上に隠れていたんだ」

Aが渡したのは先程のヨーヨー、それを使いサボから目線がそれたとき上で頭を捕まえるときを待っていたのだ

正直サボは心苦しかった
自分より小さな少年を囮にしてしまったことに

「お疲れA、大丈夫か…？」
『……うんなんとか』

先程のなにかは、なくなったAが覚束ない足取りで敵の正面にたった

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