くじら一家の末っ子くん part2 (ページ15)

今日:1 hit、昨日:14 hit、合計:212,149 hit

くじらが61匹ページ15

『父さん、今少しいい？』

甲板にいた父さんに声をかける
久々な感じがしてちょっとドキドキしている

「どうかしたのか」

『んとね、なんにもないけど…』

父さんと話したいだけ、と小声でいうと
父さんはｸﾞﾗﾗﾗ、と笑い自分の膝を指差した

『！』

そわそわしているのが自分でもわかる
膝の上に乗ると、視線が高くなるのが少し楽しい

ちらっと、頭にポートガスの事が出てきた
…ポートガスに、わりときつめにいってしまった気がする。

ポートガスはきっと、自分が何をしたいかとかそういう目標みたいなものがみえなくなっていってるんだ
今のままじゃ、ポートガスも若先生たちも救われない

ぐるぐるとそんなことばかり浮かぶ。
そのとき

ぽん、

重みが頭の上に乗る。見上げれば父さんの手だった

『父さん…』
「何か思い悩んでるのか…？」

『…ちょっとね』

「頼りたいときはいつでも頼れよ……」

うん、と頷いて、父さんの手の暖かさを暫く感じた

「わふ、わふ！」
『ハコ！』

ハコが必死に父さんの足元をくるくる回るので一回降りてハコを抱き上げてからもう一回父さんの膝の上に座る
ハコは急にくしゃみをする。その時少し開いていたチャックから一冊の古いアルバムが出てきた
俺は慌ててそれをキャッチする

『そうだ、ねぇ、アルバムみながら昔のはなし聞かせてよ！』
「昔のはなしか…」
『うん、ききたい！』

パラッ、と表紙をめくるとこの間出会った若い頃の皆が写真に写っていた
これは沢山あるアルバムの１つ
母さんが写っているものが多かったから父さんに昔貰ったものだ

『あれ』

写真の後ろにもう一枚写真があった。
その事にいままで気がつかなくてそれに手を伸ばした

その写真は、光が入ってしまっていた
皆の集合写真のようだった

『…これ』

見たことないのに、見覚えのある光景

「あｧ…懐かしいのが出てきたな…。そんなところにあったのか」
『これって…』
「20何年間前に撮った写真だ…。イゾウが入ってきたばかりの頃だな」

やっぱりそうだ。
俺が過去に飛んだとき、一度だけ集合写真を撮ったことがある
おでんがいて、ネコもイヌもトキさんもいた頃だ
俺がたっていた場所に、俺を隠すように光で見えなくなっていた

「ｸﾞﾗﾗﾗ…あいつが写ってるたった一枚の写真が、これじゃあな…」

思い出す手だてがなくなっちまった、と父さんは寂しそうに呟いた