第２９話 ページ29
本来なら、あの船に、セウォル号に乗っていたのはAだった。
Aと関わらなければ、ユナはただ、Aの事も大して知らないまま、事故当日もこの塾に通って平和な時間を過ごすことができていたはずなのだ。
「――あの船に乗るべきは、僕でした。彼女と出会って、幸せにしたくて、でも僕は……僕が彼女を、ユナを殺したんです。僕が、ユナヌナの未来を奪いました。それをずっと、きちんと謝罪したかったんです。でも、僕は向き合う勇気が出せずに……被害者ぶって、悲しみに暮れていたんです。そんな資格、僕が持っているはずもないのに」
口から飛び出したのは、謝罪なのか、罪の告白なのか、押さえつけて来た心の叫びなのか、Aにもよくわからなかった。
視界が滲んで、泣いてはダメだと思うのに、感情ばかりが先走って今にも涙が零れそうだった。
でも、ダメだ。
ユナの両親(本当の被害者)の前で、A(加害者)が泣くなんて、最低の行為以外のなんでもない。
「そう……Aは、そんなことを考えていたのね。ずっと、思いつめていたの。あんまりよね、こんなの……酷いわよね。許せないわよね。でもね、きっとあなたのせいじゃないのよ」
ソヨンの優しい声に、下がっていた視線を必死に上げた。
溢れそうな涙は、まだ何とか瞳の奥に留まってくれていた。
ぼやけていて、まったく使い物にならない視界だったけれど、ソヨンの顔が憎しみに染まっていないことはわかった。
兄たちと同じく、こちらを気遣うような表情をしている。
隣のユナの父も同じようだった。
「ソヨンの言う通りだ、A。……ユナは君と過ごすことができて、幸せだったさ。あの子はずっと、普通の高校に行けなかったことを悔やんでいた。私たちは気にしていなかったが、ユナはいい子でいたかったんだよ。普通の生活を送れる、普通の子でいたかったんだ」
静かなトーンで、言い聞かせるような語り口調のその声は、感情的になってぐちゃぐちゃに荒れてしまったAの脳内にもスッと入ってきて、言葉としてしっかり認識された。
隣に座るソヨンの手を握りながら、彼は言葉を続けた。
「君と出会って、ユナは変わったよ。少しずつ前を向く力を貰えたみたいで、やりたいことと、それに必要な勇気が釣り合うようになってきていた。……楽しそうだったんだ、本当に。毎日がね」
幸せそうな顔をしているだろう、とAと二人で撮った写真を見せられる。
二人で動物園で撮ったものだ。
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はちうん(プロフ) - 繭さん» ありがとうございます。意識はしているのですが、たまに変な文章を書いてしまうので、そう言っていただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2018年3月14日 16時) (
レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
繭(プロフ) - コメント失礼します。はちうんさんの文風がすごく読みやすくて尊敬します！これからも頑張ってください！ (2018年3月13日 13時) (レス) id: dba4d43671 (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - KNさん» コメントありがとうございます、嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね。 (2018年3月12日 7時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
KN - コメント失礼します。この作品すごく好きです。毎日チェックしてます(笑)文章がとても綺麗ですね!これからも応援してます!ファイティン! (2018年3月12日 0時) (レス) id: de585078da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：U_hi | 作者ホームページ：http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/
作成日時：2018年2月19日 2時
