第２７話 ページ27
「A……やっぱり君は、いつも時間通りだ」
「お久しぶりです。……お邪魔します」
扉を開けてくれたのはユナの父で、遊びに行ったときや、何処かに連れて行ってもらった時などに何度か話したことがあって、それなりに親しかった。
元々、ユナと恋人になる前から塾を通じて家同士それなりに交流があったのだ。
ユナの父は会計士で、Aの母の塾の税金についての仕事を引き受けてくれている。
ユナの家に来るのは一年ぶりだった。
前に来たのは去年のクリスマス休暇でこちらに戻ってきていたときで、浮気していないよな、と冗談半分で訊かれた記憶がある。
家の内装は大きく変わってはいなかった。
三人家族だったころのまま、何もかも三セットで家の中に置かれている。
それはある意味当然と言えば当然で、けれど目に付くところに飾られているユナの写真がどうしても目に付いた。
前から写真は沢山置いてあったけれど、今はその時期の写真だけじゃなくて、Aが今まで見たことのないようなユナの幼い頃の写真まで飾られていて、それなのに本来そこに並べられるはずだった修学旅行の写真は一枚もなくて、ぎゅっと胸が締め付けられた。
「昨日、塾でバイトしているチャチュルに会って、これから弟を迎えに行くんだと聞いていたから……今日尋ねてくると連絡を受けた時は驚いた」
「急でしたよね……申し訳ありません」
「いや、私たちはいつでもいいんだ。ただ、君が……帰ってきてすぐ、大変じゃないかと思って」
「いえ。……夏の帰国の際には、こちらに伺うことができず、本当に申し訳ありませんでした。本当ならば、きちんと伺った方が良かったですよね」
深く、深く頭を下げた。
何処から謝ればいいのか見当がつかなかった。
降りかかった出来事は大きすぎて、Aはそれを処理するにはまだ幼すぎた。
整えられた家の、静かすぎる雰囲気が、お前のせいだと責めているようで、息苦しい。
「いいんだよ。君も辛いのは一緒だ。……喪失は、誰にとっても辛く苦しいものだ。私たちはユナの両親だが、君だってユナと付き合っていた。関係は同じく家族だ」
そうだろう、とユナの父はお茶を置いて隣に腰を下ろしたユナの母、ソヨンに問いかけた。
久しぶりに顔を合わせたソヨンは少し痩せてしまったようで、疲れたような空気が漂っていた。
それでも、Aに向かって、えぇ、と優しく笑いかけてくれるのは、あのユナの母であるからなのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はちうん(プロフ) - 繭さん» ありがとうございます。意識はしているのですが、たまに変な文章を書いてしまうので、そう言っていただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2018年3月14日 16時) (
レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
繭(プロフ) - コメント失礼します。はちうんさんの文風がすごく読みやすくて尊敬します！これからも頑張ってください！ (2018年3月13日 13時) (レス) id: dba4d43671 (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - KNさん» コメントありがとうございます、嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね。 (2018年3月12日 7時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
KN - コメント失礼します。この作品すごく好きです。毎日チェックしてます(笑)文章がとても綺麗ですね!これからも応援してます!ファイティン! (2018年3月12日 0時) (レス) id: de585078da (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：U_hi | 作者ホームページ：http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/
作成日時：2018年2月19日 2時
