It melts (ページ20)

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『ボムギュヒョンは良い人だと思う』

急にそんなことを言われて、キョトンとする私。
何も予防線をはってなかったからか、何故だかその言葉がナイフのように胸に刺さった。

『別に2人が付き合っても、俺達が何か変わるわけじゃ無いし』

「何…？」

『付き合ってみるのもいいんじゃないかな？』

心に刺さったナイフは、カイの一言一言で深くめり込む。

すごく、カイとの距離を感じる言葉で
突き放されたような気分。

カイに悪気はない。それは分かってる。

カイを見ると、私と視線も合わさずにライトアップされている組み木の道を見ていて

その横顔が酷く綺麗で、残酷だ。

「そんなこと、言わないでよ…」

呟いた言葉は思いがけず涙声になった。
カイは慌てて私を見る。

『え、』

カイの丸くした目と視線が合うと、涙で視界が滲む。

「そんなこと、カイに言われたくない…」

『そ、そうだよね、2人の事だし。俺が口出しする権利無いのに…ごめん…』

カイは着ているパーカーの袖で今にも溢れそうな私の涙を拭ってくれる。

ふわっと香るカイの香りが温かくて涙だけじゃなくつい、泣き声まで漏れる。

堰を切ったように泣く私を前に、

『A本当にごめん…どうしよ…」

と、混乱しながらカイはその大きな腕を私の背中に回した。

『本当ごめん、そんなに泣くと思わなくて』

分かってる。

ハグなんて今までにもやったことはあるし、このハグにも何も特別な意味も無い。
子どもをあやすように規則的に私の背中を撫でるその手は、私が泣いていると言う条件付きの一時的なもの。

だけど、私は違った。

カイの腕の中が酷く心地良い。

ハグに意味が欲しくて
その温かい手が奏でる規則的なリズムがこのままずっと続いて欲しい。

それを自覚した時、我に帰る。
悲しかった気持ちと涙がピタッと止まった。

『A？』

私を抱きしめながら、不思議そうに聞いたカイ。

私はその腕から抜け出して
カイを見た。

ああ、どうしてだろう。

今まで友達だったのに。

『A？あの、ごめん本当』

カイはまた困ったように呟いた。

本当に申し訳ないという気持ちが伝わってきて
もういいよ、って言いたいのに
言葉が出ない。

もう私には、友達としてカイにかけてあげる言葉が無い。

いつだって自分を犠牲にして

私の涙を拭う手も心も温かくて

そんな優しさの塊なカイの事を

好きだと気づくなんて

私はなんて残酷な女だろうか。