無意識のSOS ページ9
私は直人にこれまでのマイキーのこと、マイキーに付いている呪いのこと。
それから呪術界のことを話した。
「一応、忠告しておくけれど、呪術界には首を突っ込み過ぎない方が身のためよ。まぁ、それは東卍にも言えることだけれど…」
言えば彼が「それは何となく理解しました」と頷く。
「頻度はそれほど多くありませんが、不自然な力が働いたような不可解な状況の現場もありましたし、今までに鑑識よりも先に現場に入ることを許される外部の人間も見たことがあります。そういう時は決まって“深入りするな”と言われていましたから」
「そう…」
「貴女に会えて本当に良かった。今までの未来では、Aさんは途中で不可解な失踪をして消息不明のまま足取りも掴めませんでしたから」
「ハハッ…………何それ。…まぁ、心当たりがあるから、たぶん上層部に消されたんだろうね」
乾いた笑いで言えば、直人が複雑な顔をする。
「私もアンタに会えて良かったよ。もう少ししたら私は、アンタにとってまた消息不明になるかもしれないから」
言えば直人が顔をしかめる。
「それは、どういう事ですか?」
「ん?
「………何か起こるんですね?」
「さぁ、どうだろう?」
何かを探るような直人の視線にはぐらかして答える。
これ以上、彼が呪術界のことに踏み込むのは危険だ。
「………、変ですね」
顎に手を沿えて、直人が思考を巡らせながら呟いた。
「Aさんは、一度触れた事がある人の未来が見えると言いましたよね。だったら、ご自分の未来も覗ける筈。わざわざ曖昧な言い方で僕に打ち明けたのは何故です?」
指摘されてハッとする。
確かに黙っていればこんな風に疑われることも追及されることもなかった。
なのに、どうして口を付いてしまったのか。
「………どうしてだろね」
自分の声色が思いのほか悲しげで思わず俯く。
私は誰かに助けて欲しいのかもしれない。
「……一つ補足しておくと、私の術式未来予測は確かに自分の未来も覗ける。けれど、その時に持っている呪力を8割消費するの。いざというときに動けないと困るから、私は自分の未来は見ないようにしてるって訳」
「そういうものなんですね」
「今は5日後ぐらいまでの未来が覗けるけれど、遠い時間を覗けばそれだけ呪力も消費する。便利だけど結構リスクもあるんだよ。だから術式があってもこんな未来になったのかもね」
そう言って、私はまた乾いた声で笑った。
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作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時