タイムリープのこと ページ7
「アンタ、どこかで頭でも打ったんじゃない?」
直人の話を聞いた私はそう口にしていた。
傑の呪霊は先ほどまでの長電話で疲れたのか、幸いにもすやすやと寝息を立てている。
「いいえ。打っていません」
「じゃあもう一度聞くけれど、直人は呪霊とか見えたことがないのよね?」
「はい、全く」
頭の中で彼の話を整理する。
直人はヒナの弟で、直人とタケミっちが握手をするとタケミっちが過去と未来を行き来できるという。
タケミっちは所謂タイムリーパーらしい。
それが本当だとすると、その力の正体は術式か何かで、どちらかが呪術を使える人間だと仮定すれば辻褄は合う。
けれど、直人は呪霊を見たことがないらしい。
でも、今の話を聞いて納得する部分もある。
この前のタケミっちがいつもと違ってたこと。
昔、タケミっちが東卍と愛美愛主の争いを止めようとしたり、8・3抗争ではドラケンを助けようと必死になったり、血のハロウィンでは圭介のことも助けようとしてくれたこと。
全てタイムリープしてきたタケミっちの行動だとしたら…
違和感を感じていたモヤが晴れていく様な気分だ。
「タケミチくんが捕まるのは時間の問題でした。だから、僕の手で先に逮捕して彼と接触を図ったと言う訳です」
「で?過去に戻ったタケミっちの抜けた体は今昏睡状態にあると?」
「はい、警察病院に入院しています」
「それで?何で私に協力を求めるの?」
タケミっちが過去に戻った。
だとすると、今いる現代また変わる可能性が高い。
だったら何もしなくても良いじゃないか。
現代で何かしても過去が変われば未来が変わるんだから。
「僕にAさんと佐野万次郎のことを教えて欲しいんです」
その言葉に私は顔をしかめる。
「何のために?」
仮に直人の話しが本当だとしても、簡単に私たちのことを話すわけにはいかない。
コイツは警察だ。
罠の可能性だってある。
「過去が変わって僕の記憶が上書きされても、トリガーの役目を果たしているからなのか、僕は変わる前の出来事も覚えているんです。勿論、タケミチくんも」
「都合の良い話ね」
「そう思われても仕方ありません」
ハハッと笑う私に直人が苦笑いする。
「でも、だから知りたいんです。過去に行く前にタケミチくんに言われました。時間がなかったからAさんにタイムリープのことを話せなかった。けれど、未来を覗く事が出きる貴女なら僕らの助けになってくるんじゃないか、って」
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作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時