傍に居たい理由 ページ39
「へぇー、二人ともそういう感じなんだ」
硝子の言葉に言い返すことなく、黙ったままほんのり頬を赤くしているA。
否定されないのは、一歩前進だなと思う。
あの日の昼食の後、込み合っている通りを二人で歩いて暫くすると他の男の視線がAに向けられていることに気付いた。
ソイツらにガンを飛ばして、Aと接触する前に追い払う。
そこまでは良かった。
だが、俺が何度か女子に声をかけられた時、少し調子に乗ってしまったのだ。
Aが俺をカッコいいと思っていないことを数時間前に知って、俺がモテることを見せつけたくなった。
それが間違いだった。
「悟、置いてくわよ！」
そう言ったAの顔は、少し怒っていて人混みの中を先に進んでいく姿に焦った。
声をかけられていた女子を置いて追いかける。
と、いつの間にかAに絡んでいる二人組の男。
しかも、そのうちの1人が彼女の肩を組んでいる。
「は……？」
俺でさえ、数日前の任務でAを引き寄せたら殴られたってのに！！
哀れに思った硝子が後でこっそり治してくれたが、あの時の痛みはまだ感触がしっかりと残っている。
俺は何やってんだ？
男たちと自分自身にイラつく。
一度は男を追い払っていたAだったが、路地に連れ込まれるのを見て先を急ぐ。
あと少しで殴られそうになっていたところをギリギリで止めた。
「テメェら俺の女に何してんだよ」
いつになく低い声が出て睨み付ければ、「…さ、とる………？」とAの声。
そこに何時もの強気なAは居なくて、困惑した表情に少し潤んだ瞳。
男どもを追い払った後、泣くのを我慢している姿を目にして気が付くと後ろから抱き締めていた。
「お前、泣かねぇようにとか考えてんだろうけど、無理すんな。……こういう時ぐらい甘えろよ。しょうがねぇから俺が一緒にいてやる」
コイツはコイツなりに色々抱え込んでいる。
それを知っているから、強がってんだと思った。
だから、傍に居てやりたいと思ったんだ。
照れ隠しでしょうがなくとか言っちまったけど。
そんな彼女が初めて甘えてくれたからだろう。
気が付くと“好き”を告げていた。
2005年─12月25日 聖夜の任務→←2005年─12月12日 追跡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月見 | 作成日時：2022年11月8日 22時
