好きだ ページ18
「先生!追いますか!?」
「いや、いい」
「そーそー…ッ、やめときな。……アイツ、ただの一般人じゃないから」
「A!喋んな!!」
「悟、昔の口調、戻ってる…」
「そんな事言ってる場合か!直ぐ硝子を─」言い掛けた悟に被せるように「先生!僕が!!」と乙骨が声を張る。
翳された彼の手を私は掴んで止めた。
「っ、私…呪詛師だよ。…アンタたちが、私を治すの……ダメでしょ」
言えば表情が揺れた。
乙骨が眉を歪める。
さっきまで彼を囲っていた二人と一匹も複雑そう表情で私を見ていた。
「貴女は僕と里香ちゃんに一度も攻撃しなかった。それに、五条先生がこんなに取り乱すとこ初めて見ました」
「確かに」と女の子が頷くと隣の男の子も「しゃけ、しゃけ」と頷く。
「だから、きっといい人です!」
「…私は、いい人じゃない」
「いやお前、いいヤツだった」
パンダが呟く。
よく見るとパンダの腕がもげていて、そこには綿が詰まっている。
喋るぬいぐるみってとは………
「もしかして……正道の、パンダ?」
尋ねると「おう!」と元気な返事。
昔、紹介してもらった時は小さかったから気が付かなかった。
「…お前、今まで何してたんだ」
悟が暗い顔で尋ねてくる。
「東卍にいた。…弟を守りたかったの。妹は……守れなかったから。……でも、ダメだった。……私は弟の命令で、消されたみたい」
ぎゅっと悟が私を抱き抱える腕に力を込める。
「悟、ごめん。……ただ家族を守りたかった…んだ。……こんなことなら、みんなを頼れば…良かった。…そしたら、私も悟と硝子の隣にいられたかな?」
「あぁ」と頷かれた返事に嬉しさが込み上げてくる。
「…昔『しょうがねぇから俺が一緒にいてやる』って、言ってくれたこと…あったでしょ?」
「…おう」
「嬉しかった」
「…。」
「……悟、目…見せて」
悟の顔に手を伸ばすと、彼が目元の包帯を取った。
そこには相変わらず美しい彼の瞳が、私を写している。
「綺麗………。私…、悟の目、好き、なんだぁ……」
「…ハッ、Aにとって僕の好きな所って目だけ?」
少々おどけた調子の声に「ううん」と否定する。
「悟が、好きだった。ずっと、会えなかったけど、思い出すと恋しかった。……私、バカだよねぇ………まだ悟が…好きみたい」
目の前が暗くなっていく。
「悟は…?」
“好きだ”
その言葉に安心した途端、私の意識は遠のいた。
─Bad Endの未来 part2─終─
2017年─12月30日 悟と直人(作者より)→←ここに来た理由
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作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時