私と傑と乙骨 ページ15
その辺に停めてあった高専関係者の車を奪った私は猛スピードで高専へ向かった。
近くまで来れば、激しい戦闘の音と地響きが聞こえてくる。
門の前で車から降りると、走ってその渦中を目指した。
言い争っている声が聞こえてくる。
少しすれば傑の背中と、前に見せてもらった高専の生徒証と同じ顔を見つける。
その側には話に聞いていた特級過呪怨霊、折本里香の姿もあった。
折本里香の姿と漂う呪力の膨大さに、傑がくれた資料で見た時よりもゾッとする恐ろしさが襲ってくる。
けれど、私は構わず叫ぶ。
「傑ッ！！」
二人が私を見た。
「おや？意外と早かったね」
ニヤリと笑う傑が全てを物語っていた。
「アンタ！騙したのね！！」
「人聞きの悪い。警察から助けてやっただろ？今日は、君の元お仲間からも助けてやったじゃないか」
「煩いっ！アンタは最初からマイキーを探すつもりなんてなかった！！手伝う素振りをして私を利用するだけ利用したのよ！！」
「私たちは縛りを伴った約束をしたんだ。君の弟はちゃんと探したじゃないか」
「でも、本気で探した訳じゃない。そして、その中でアンタはあるヤツと手を組んだ。違う？」
キッと睨み付けて問いかければ、傑がクククッと笑う。
「鈍感なAにしては上出来じゃないか！」
「ふざけないで！三途もここに来ているんでしょ！！」
「あぁ、いるよ。巻き込まれるといけないから隠れてもらっている」
笑っていた筈の傑が途端にスンと真顔になる。
これをチャンスと捉えたのか、乙骨優太と里香が動く。
「あ゛あ゛あ゛っ！！」
雄叫びをあげながら傑に攻撃を入れる里香。
そして、里香の主人である乙骨の方は私に殴り込んで来た。
間一髪で腕でガードしながらそれを避ける。
が、先ほどの戦いで負傷していた私は避けきれずに、彼の拳が頬を擦った。
「誰だか知りませんが、貴女も敵なら容赦しません」
怒りに満ちた彼の目が私に向けられる。
「っ、…そうね。仲間ではないけれど、たった今を以て敵でもなくなったかもね」
私の言葉に、どういう意味だ？と言わんばかりに彼が眉を潜める。
色々と傷は痛むし、状況は最悪だけれど、乙骨に触れられたのは好都合だ。
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作者名：月見 | 作成日時：2022年11月8日 22時
