逃走 ページ12
「A、今ならまだ間に合う。違うなら否定しろ」
「Aのことになると甘ぇな、イヌピー。聞くまでもねぇだろ。コイツがユダだったんだよ」
カチャッと音がして、ココから拳銃が向けられる。
百鬼夜行の前にピンチが訪れるとは思いもしなかった。
「……間に合うって、何に間に合うの？」
「あ？」
「もう遅いんだよ！東卍に居ても私ですら弟に会えない。私にとってたった一人の家族なのにだよ！？隆も！千冬も！パーちんも…！！みんな居なくなった！！もうどう頑張っも私が好きだった東卍は戻ってこない！！！」
感情が爆発する。
もう、
パンッと音がする。
ココが拳銃を打った音だ。
けれど、私は無傷のまま。
その様子に目の前の二人が目を見開く。
ココが放った玉は間違いなく私の心臓を狙っていた。
けれど、傑から渡されていた監視用の呪霊が飛び出してきて私を庇ったのだ。
これは数秒前に未来予想を使って、ココの未来を覗いた時に視えた光景と同じだった。
二人には玉が空中で凹んで止まったあと、左斜め下にゆっくり落ちていく、というさぞかし不思議な光景が見えたことだろう。
「なっ！？」とココとイヌピーが呆気にとられている隙にガッとココの腕ごと拳銃を蹴りあげる。
そして、勢いのまま地面に手をついて側転の勢いで足を蹴りあげてイヌピーを狙えば、バランスを崩した彼がココの方へ倒れ混む。
スタッと着地した私はこの場から離れるために、足に呪力を纏って強化すると走り出す。
「ッ！テメェッ！！」
ココの怒鳴り声が背中から聞こえてくるけれど、振り返ることなく走った。
前方から二人の部下が道を塞ぐように飛び出して来た。
一度、触れたことがある相手だったから、未来予想を使ってその攻撃を掻い潜る。
次いでに鳩尾に一発くれてやった。
「ッ、何で邪魔されてんのにあんなに速く走れんだよ！！」
そんなココの叫び声。
だって、私普通の反社じゃないもんね。
まぁ、反社に普通も何もないけど。
こうして無事にココとイヌピーの追跡を潜り抜けると、裏路地に待機していた傑の呪霊に乗り込んで新宿を目指した。
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作者名：月見 | 作成日時：2022年11月8日 22時
