【AtR】桜花ニ月夜ト袖シグレ【歌い手】

17枚目 ページ18

「･･･今年も綺麗に咲いたな」


「ですね！桜花も見てますかね？」

「見てるよ！って言っても聞こえないのかぁ･･･」


彼らと出会って11回目の春が来た。

なぜか私は成仏せずに幽霊になっていた。

11年も経てば色々なことが変わってくる。

例えば、2人はすっかり大人になって私の夢を叶えてくれたこと。

彼ら自身の夢を叶えたこと。

CDを発売したこと。


「すっかり有名人だね」


笑ってそう言うけれど、彼らには聞こえてくれないのがもどかしい。


「桜花、また詞借りるね」

「どーぞ！」


2人は木の幹に体を預けて何やら話をし始める。

私もそらるの横にお邪魔しちゃおうっと･･･

見た目は全く変わらない私だけど、変わったこともある。

1つ、まふが作業しているのを見ていたら少しだけど作曲ができるようになったこと。

2つ、すっかり泣かなくなったこと。

そして、そらるが好きだと気付いたこと。

彼は私のお墓の前で「一目惚れだった」と話した。

でもきっと私も彼に一目惚れだったんだろうと死んだ今なら分かる。


「もう少し早めに気付きたかったなー！！」


大声で後悔を叫んでも無反応。


「面白くないっ！誰かとお話がしたい！」


これが私の最近の悩み。


「じゃあこれでお願いできる？」

「分かりました！お腹空きましたね･･･どこか食べに行きます？」

「･･･そうだな」


立ち上がった彼らの後を追いかけるように少し走る。


「･･･雨が降りそう」

「･･･雨は嫌いです」

「ふっ、･･･俺も」


もし貴方が、いつしか誰かと愛を紡いだって、泣きそうな夜は傘を差してあげるから。

だから私のことを想って泣くのはもうやめて？

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