牽制は時に敵を作る ページ3
及川たちと別れて教室に入るなり、私は机に突っ伏した。
なんで及川と同じクラスじゃないんだろうな、私。
それよりお弁当作り張り切って早起きしすぎた。眠い。
目瞑ったら一瞬で寝れる気がするけど、教室が騒がしくて案外寝れない。
お弁当は及川の好きそうなものばかり作った。美味しいって、言ってくれるかな。
喜ぶ及川の顔を思い浮かべてはニヤニヤしていた。
「はよっす」
頭上から降ってきたその声に、緩んだ口を引き結んでゆっくりと顔を上げる。
「うおっ、なんだその顔」
なんて名前だっけ、この人。
昨日席替えしたばかりで、自分の席の周りの人たちを把握していない。というか、クラスの人たちも顔と名前が一致していない人が大半だ。
短髪で赤みがかった茶色の髪。たまに、及川と一緒にいるのを見る人。確かバレー部の―――
「マッキー」
及川がそう呼んでいたことを思い出して口にする。
「お、おう。花巻、な」
改めて自分の名前を言う彼は、前の席の椅子を引き横向きに座って私の机に肘を掛けた。
「隈すげーぞ、大丈夫か」
花巻が私のげっそりとした顔を覗き込む。
「ちょっと、寝不足」
私は重たい瞼を伏せる。
「お前って及川と仲いいよな〜。俺とも仲良くしようぜ?」
花巻の唐突な言葉に、私は思わず眉を顰めた。
「なんで」
「なんでって、席近いし?これも何かの縁だろ?」
私はできれば仲良くしたくないんだけど。
及川の周りにいる人は、男だろうが女だろうが、全員邪魔。
―――岩泉ただ一人を除いては。
「花巻」
でも、利用できるものは全部利用したいと思ってしまうのは私の性分。
これもきっと、私が陰口を言われる原因の一つだ。
「私、及川のこと好きなんだよね」
「あぁ、知ってる。わかりやすいのなお前」
逆に、私のこの気持ちを知らない人はいない。
私がそう仕向けるかのようにアピールしているのだから。
及川に近づくな、彼の周りをうろつく女子たちにそう言うように。
女というものは集団というものを作りたがる。自分の味方を、共感者を束にまとめたがる。そして群れになって個を除け者にするんだ。
及川は一人しかいないのに。団塊になってどうなるっていうんだ。それじゃ結局欲しいものは自分のものにならないじゃないか。
周りのオトモダチに、爪弾きを恐れて何もできないまま終わる。
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いおり - 道徳の教科書に載ればいいのにぃ!!泣くことしか出来ませんが…凄く素敵な作品で本当に号泣しました!!1日で全部読ませて頂きましたがここまで素晴らしい小説は今までで一番だと思います!! (2020年12月9日 15時) (レス) id: 5e524467c0 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 本編は全て夢主目線なのに他の登場人物の感情も伝わってきて、切なくなりました。作者様の描写が繊細だからこそ、読み手にしっかり伝わるのだと思います。番外編でまた深く心情が知れて切なくなりました。特にマッキーがかなりグッときました。すごく素敵な作品でした! (2020年6月22日 9時) (レス) id: 2f4dc25fc0 (このIDを非表示/違反報告)
おかか - めっちゃ面白かったです!一人一人の言動の真意とかしっかり話が作られていて、リアルで凄いです! (2020年6月21日 9時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルーテル(プロフ) - 今まで読んだ占ツク作品で1番好きかもしれません…1人1人の心情がリアルでぐちゃぐちゃなのに真っ直ぐな恋心がとても心地いい作品でした!マッキーの切なさが一番心に来ました…いい作品をありがとうございました! (2020年5月31日 22時) (レス) id: 98b39f25a9 (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 泣いた...岩泉夢主さん好きなのかなぁ?は勘違いか...もうカッコよすぎ...ごちそうさまですっ (2020年1月13日 12時) (レス) id: 538cc2e76e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年10月17日 21時