地獄の家路 ページ12
「…コーチが、呼んでてよ」
「え、溝口くんが？」
花巻が定まらない視線を地面に泳がせてから私を見て、‛悪い’と口をパクパク動かして手を立てた。
恐らく、及川との下校を邪魔した謝罪を込めた意だ。
終始彼の様子を見るに、私が及川の隣にいたのを見えていなかったのだろう。丁度ここは明かりがなくて暗いし。
そんな花巻を、隣に立つ松川が不思議そうに見ていた。
「Aごめん、ちょっと行ってきていい？」
律儀に私に確認を取った及川を、私は快く送り出す。ここで私が引き止めるわけがない。
「おい、こんな暗いとこにコイツ置いていくのかよ」
岩泉がその鋭い目を一瞬私に向ける。
「じゃあ岩ちゃんが送ってあげてよ」
『は？』
溝口くんたまに話し長くてさ、と付け足した及川に対して、岩泉と私の声が綺麗に重なった。
岩泉と帰るのなら花巻と帰りたいところだが、生憎帰る方向が真逆だ。
「じゃあ私、及川のこと待ってる」
私の言葉に目を丸めた及川が「ダメダメ、女の子を一人にしとくの危ないし」と首を横に振る。
「でも岩ちゃん。俺がいないのをいいことにAのこと襲ったら許さないよ？」
「んなことするわけねえだろ！お前と一緒にするなクソ及川！」
「ひっどい岩ちゃん！どういう意味さ！」
私と岩泉が一緒に帰ることを前提に話を進める及川にすかさず切り返した岩泉は、今にも殴り掛からんとする勢いで言葉を放ち、そのまま普段と変わらない調子で言葉のやり取りをする。
岩泉は、私と一緒に帰ることに関しては何も文句はないわけ？
「じゃあまた明日ね〜」
ひらひらを手を振った及川は私たちに背を向け、校舎内へと足の回転を速めた。
「待っておいか、」
「いいから、帰んぞ」
岩泉の低い声が、私の及川を呼ぶ声をかき消した。
そして不意に後ろへと引っ張られた鞄に、足がもつれそうになる。
「ちょっ、岩泉！私は及川と、」
「うるせえな、あんなとこに一人でいられたらこっちだって気が気じゃねえだろうが」
「ちょっと、岩泉！」
ずるずると岩泉に鞄を引かれるがまま及川と引き離された私に、花巻は姿が見えなくなるまで両手を合わせて何度も頭を下げていた。そんな彼からは、次の日ご丁寧な謝罪があった。
隣で不審な行動をとる彼に‛何してんだよ’と言いたげな松川は、やっぱり私に冷たい視線を向けるばかりだった。
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いおり - 道徳の教科書に載ればいいのにぃ!!泣くことしか出来ませんが…凄く素敵な作品で本当に号泣しました!!１日で全部読ませて頂きましたがここまで素晴らしい小説は今までで一番だと思います!! (2020年12月9日 15時) (
レス) id: 5e524467c0 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 本編は全て夢主目線なのに他の登場人物の感情も伝わってきて、切なくなりました。作者様の描写が繊細だからこそ、読み手にしっかり伝わるのだと思います。番外編でまた深く心情が知れて切なくなりました。特にマッキーがかなりグッときました。すごく素敵な作品でした！ (2020年6月22日 9時) (レス) id: 2f4dc25fc0 (このIDを非表示/違反報告)
おかか - めっちゃ面白かったです！一人一人の言動の真意とかしっかり話が作られていて、リアルで凄いです！ (2020年6月21日 9時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルーテル(プロフ) - 今まで読んだ占ツク作品で1番好きかもしれません…1人1人の心情がリアルでぐちゃぐちゃなのに真っ直ぐな恋心がとても心地いい作品でした！マッキーの切なさが一番心に来ました…いい作品をありがとうございました！ (2020年5月31日 22時) (レス) id: 98b39f25a9 (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 泣いた...岩泉夢主さん好きなのかなぁ？は勘違いか...もうカッコよすぎ...ごちそうさまですっ (2020年1月13日 12時) (レス) id: 538cc2e76e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年10月17日 21時
