猫と安堵 ページ19
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一歩私へと近づいたクロに、私は孤爪を盾にして距離を保つ。
その胡散臭い笑み、嫌な予感しかしない。
そんな攻防も一瞬にして決着がつき、伸びてきたクロの手によって腕を掴まれ、マミの前へと引っ張り出される。
「礼なら、コイツと仲良くしてやって」
そう言ってつんのめる私の頭に手を乗せたクロを見上げては、私は眉を顰めた。
「は、何言ってんの。私とマミは___」
言いかけてはハッとしてコホンと咳払いをした。
「私とマミは元々仲良しですよ?黒尾先輩」
予想外の展開に、勢い余って素が出てしまった。
注意が足りなかった自分の言動に後悔する間もなく、マミに視線を向けると、
「は、はい。勿論です」
顔を真っ赤にさせた彼女は、クロしか見えていないようだった。
「よかったなー、猫ちゃん」
とクロが私の頭を雑に撫でる。
マミが、そんな私たちを唖然と見ている。
「ちょっと、黒尾先輩」
私はそんな彼の手を払う。
マミに、変な勘違いをされたくない。
そんな私の心配は、顔を真っ赤にさせて若干の放心状態のマミを見て杞憂だと安堵するが、このままだとクロが何をしでかすかわからない恐怖感から、さっさと退散することにした。
*
「き、緊張したぁ」
教室に戻り、マミが机に頬をつけ、気が抜けたように言葉を吐いた。
「ていうかやっぱA、黒尾先輩と仲いいんじゃん。頭ポンポンなんてされちゃってさー」
唇を尖らせるマミに、私は内心焦る。
そりゃそうだよね。ばっちり視界に入っていたわけだし。
「でもまぁ。私一人じゃ行けなかったし。…ありがとう」
そう言って顔を上げたマミに、私は目を丸くした。
特別なにかしたわけじゃないのに、嬉しかった。
「次はどうしよう。あ、そうだ。私も孤爪と仲良くなれば…。どう思うA!」
と私に助言を求めるマミに「なになに」と、イノっちとアンナが席に集まってきた。
そんな彼女たちに、マミはこっそり人差し指を口元に立てるのだった。
(流石に孤爪は巻き込まないようにしよう)
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クロいいよね - 完結おめでとうございます とっても面白かったです!! (2022年11月21日 22時) (レス) @page50 id: 18092cdeea (このIDを非表示/違反報告)
ちあ。(プロフ) - コメント失礼致します。完結おめでとうございます!毎日更新楽しみにしていました。私自身、自分は流されないように頑なになりすぎていたんだな、と作品を読みながら思いました。周りに合わせることも流されないことも、両方器用にできるようになりたいって思いました! (2019年10月14日 1時) (レス) id: 2013350887 (このIDを非表示/違反報告)
momx(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです。 (2019年10月13日 17時) (レス) id: 2de1bab8eb (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - 完結おめでとうございます!素敵だなと思う作品は小鈴さんの作品がほとんどで…。とても楽しまさせて頂きました。 (2019年10月13日 11時) (レス) id: 5f1f2e19c0 (このIDを非表示/違反報告)
usagicyanda(プロフ) - 完結おめでとうございます!丁度一年ほど前に私もこの主人公と全く同じ1つ上の人気者の先輩と付き合っていました、ほんとに全く同じ状況で涙がこぼれました..その先輩は晒すだけ晒して守ってくれませんでしたが... けど主人公ちゃんとクロが幸せになれてよかったです! (2019年10月13日 3時) (レス) id: cef44ace1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月29日 17時