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偽りと珈琲 ページ11

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まぁ、あんな現場に出くわすことなんて、そうそうあることではないと思うけど。




「ま、そうだよな」



クロが、私が間違えてボタンを押したブラックコーヒーをプシュッと開けて缶に口をつけた。


それ、私のお金。





「あれだぞ。自分偽り続けてたら、いつか本当の自分わかんなくなっちまうぞ」





そんなことない。


自分を見失わないために、日々吐き出しているんじゃないか。


それを呑み込んだから、終わりだと思っているから。


でもそれは、繕った自分を受け入れてるも同然だ。






「俺思うんだけどさ。本当の自分じゃない自分を見て仲良くする友達ってそんなに大事か?それは表面上のお前だけしか見てないだろ。本当のお前を見て離れていくやつなんて放っておけばいいだろ」





そんなの、周りにちゃんと友達がいる人の台詞だ。


でも何も言い返すことができないのは、クロの言っていることに納得している自分がいるからだと思う。


全部、正論だ。


何一つ間違ったことを言っていないのに、悔しいと思ってしまうのはなんでだろう。







「でもまぁ、俺には猫被ってないわけだしな」






飲み干した缶をゴミ箱に入れたクロは、小銭を取り出し自販機に差し込む。


そしてガコッと落ちた それ を、私の抱える飲み物の上に乗せた。




「んじゃ、それ飲んで少しは大人になれよ〜」




そう言い残して、クロはひらひら手を振って歩いて行った。


嫌な、男。











「あれ?A、コーヒー飲むの?」


教室に戻って机に並べた飲み物を見てハッとする。




「間違えた」
「ほーんと、どっか抜けてるよねAは」
「ドジっ子キャラかよ〜!」




大人になれって、苦手なのをわかって買ったのか…?
そこには私が押し間違えたブラックコーヒー。


彼女たちの下品な笑い声に包まれる中で、私はさっきのクロの言葉を思い出す。


自分を変えたいなんて、そんな大層なこと思わない。


それなら、自分が周りに合わせればいいだけだって、そう思う。


自分を押し殺して、取り繕って、相手に合わせれば、誰も消えたりしないのだから。


例えそれが、上辺だけの関係だって構わない。


本当の私を見てくれなくたって。


だって、一人は怖いから。




プシュッと開けた缶からは、ほのかな苦みと大人の香りが漂った。






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設定タグ:ハイキュー , 黒尾鉄朗 , 音駒   
作品ジャンル:恋愛
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クロいいよね - 完結おめでとうございます とっても面白かったです!! (2022年11月21日 22時) (レス) @page50 id: 18092cdeea (このIDを非表示/違反報告)
ちあ。(プロフ) - コメント失礼致します。完結おめでとうございます!毎日更新楽しみにしていました。私自身、自分は流されないように頑なになりすぎていたんだな、と作品を読みながら思いました。周りに合わせることも流されないことも、両方器用にできるようになりたいって思いました! (2019年10月14日 1時) (レス) id: 2013350887 (このIDを非表示/違反報告)
momx(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです。 (2019年10月13日 17時) (レス) id: 2de1bab8eb (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - 完結おめでとうございます!素敵だなと思う作品は小鈴さんの作品がほとんどで…。とても楽しまさせて頂きました。 (2019年10月13日 11時) (レス) id: 5f1f2e19c0 (このIDを非表示/違反報告)
usagicyanda(プロフ) - 完結おめでとうございます!丁度一年ほど前に私もこの主人公と全く同じ1つ上の人気者の先輩と付き合っていました、ほんとに全く同じ状況で涙がこぼれました..その先輩は晒すだけ晒して守ってくれませんでしたが... けど主人公ちゃんとクロが幸せになれてよかったです! (2019年10月13日 3時) (レス) id: cef44ace1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月29日 17時

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