黒髪とネクタイ ページ41
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風に揺られて靡く髪が、やけにスローモーションに見える。
「髪、伸びましたね」
「え?あー。そろそろ切ろうかなって思ってるんだよね」
…切るのか。
と、俺は艶を帯びた綺麗な黒髪をすくい上げる。
さらりと逃げた髪が、夕日が眩しく輝く中で、より一層透き通って煌めく。
「なに?赤葦」
その長い黒髪を耳に掛ける仕草が、やけに色っぽく見える。
「いえ」
「なに、気になる」
Aさんが俺の前に立って「なぁに」と首を傾げる。
「なんでもないです」
鞄を肩に掛け直してAさんを横切ると、ほのかに優しい香り。
「ねえ、赤葦なにってば。気になる言って!」
小走りで横に並ぶAさんが俺の袖を引く。
「なんでもないですって」
頬を掻いて視線を道の端に向けると、いつの間にか俺の正面に回り込んだAさんが不気味に笑っていた。
…なんか、嫌な予感がする。
「言ってくれないと」
「わっ、」
体がよろめいたのは、Aさんが勢いよく抱きついてきたから。
「言ってくれないと離さないから」
あぁ、この人の匂い、安心する。
「誰か来たらどうするんですか」
「関係ないもーん」
子供か。
でも俺の首に腕を巻いて、必死にしがみつくAさんが可愛くて。
「足、限界なんじゃないですか」
その身長差、約30センチ。
「言ってくれるまでっ…、離さないッ」
この人は、もう俺のもの。
俺は必死に背伸びする彼女の、綺麗な艶やかな黒髪を指に絡ませる。
「髪、長い方が好きです」
言った瞬間、首が解放され、Aさんが脱力した勢いで俺のネクタイを下へと引いた。
グッと締まった首元が窮屈だ。
「そこは、どんなAさんも好き、でしょ」
噛まれた唇が、熱を帯びた。
「どんなAさんも、好きです」
「…遅いっつうの」
お返しに尖った唇をついばまれた彼女の頬は、夕日に負けないくらい真っ赤に染まっていた。
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凛々 - 赤葦と夢主の掛け合いが素敵…。甘さが私に合いすぎです!続きが気になって仕方ないです。 (2019年11月8日 20時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 39話以降のタイトルのセンス良すぎでは…。全話タイトルつけてほしいくらいです。。。 (2019年9月23日 18時) (レス) id: c3e4fd17c8 (このIDを非表示/違反報告)
madoka - コメント失礼します。小鈴さんの作品は「これぞ純愛!」って感じがして、穢れが一切ない感じがたまらなく好きです!今回もいい感じのキュンキュンありがとうございます!番外編と続編も楽しみにしています!これからも頑張ってください! (2019年9月20日 13時) (レス) id: b7f00b86d0 (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - あまーい!!実は木兎さんが主人公に片思いをしていたこともめっちゃ胸キュンでした!!本当に小鈴さんの作品大好きです!!!!! (2019年9月19日 13時) (レス) id: 1ffe4440e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - めっちゃキュンってくるのと、赤葦のかっこよさが、いつもより増してまじでよかったです!他の作品も読んでみようと思います (2019年9月18日 20時) (レス) id: 2af2bdbcf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年9月7日 19時