木兎さんと彼女 ページ14
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ある日の放課後。
時折声を掛けてくる女子に会釈をしながら、部室に向かう。
ふと、逃げるように視線を窓の外に投げると、いつもは誰もいない校舎裏に二人の男女。
綺麗な黒髪を靡かせるAさんと、首元に手を当ててどことなく恥ずかしそうに何かを離す男。
…あれは流石に、演劇の練習じゃないよな。
俺は立ち止まって窓際に手を置く。
『────あかーし！覗き見なんて趣味悪い！』
あの日のAさんの言葉を思い出す。
これは覗き見じゃない。
目につくようなところで告白されている貴方が悪い。
男が話し終えたかと思えば、Aさんが即行頭を下げた。
悩むふりくらい、と思うけどあの人はあぁいう馬鹿みたいに正直なところがいいんだよなって、その姿を見て思わず吹き出してしまう。
笑う余裕があるのは、Aさんが告白を断ったっていう確信を得たから。
頷いて足早に立ち去る男の姿が、死角に入ったところでAさんが両手で顔を覆って脱力したようにしゃがみ込んだ。
大丈夫だろうか、と少し窓から身を乗り出すと────
「…え」
俺は自分の目を疑った。
目を擦る。いや、俺が見間違えるはずがない。
木の陰から姿を現したのは、木兎さん。
からかいに来たのか、彼女の保護者役としてか。
でも、そんな俺の考えはすぐに消し飛ぶ。
────Aさんの頭に乗せられた、木兎さんの手によって。
頬を真っ赤に染めたAさんの顔を、木兎さんが覗き込んで笑っている。
俺が行けないところに、貴方はいつもいる。
「はっ、」
乾いた笑いが、口から漏れた。
＊
部活を終え、渡り廊下を歩いていると焦った様子で校内を走っているAさんが見えた。
あの人が走っているところ、よく見るな。
暫くして、走って戻ってきたAさんと鉢合わせる。
「あかッ、あし」
「どうしたんですか」
酸素を貪るように荒い呼吸のAさんは、緊迫した表情をしていた。
「ないの！」
人気のない校舎に、Aさんの澄んだ声が響く。
「赤葦、ないの！どこ探しても見つからない！」
俺のＴシャツを掴んで体を揺らす彼女は、今にも泣きそうだ。
「落ち着いてください。なにが見つからないんですか」
俺は宥めるようにAさんの両肩を掴む。
こういうとき、どうしたらいいんだっけ。木兎さんの時は、どうしてたっけ。
慌てる彼女を前に、俺も内心焦っていた。
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凛々 - 赤葦と夢主の掛け合いが素敵…。甘さが私に合いすぎです！続きが気になって仕方ないです。 (2019年11月8日 20時) (
レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 39話以降のタイトルのセンス良すぎでは…。全話タイトルつけてほしいくらいです。。。 (2019年9月23日 18時) (レス) id: c3e4fd17c8 (このIDを非表示/違反報告)
madoka - コメント失礼します。小鈴さんの作品は「これぞ純愛！」って感じがして、穢れが一切ない感じがたまらなく好きです！今回もいい感じのキュンキュンありがとうございます！番外編と続編も楽しみにしています！これからも頑張ってください！ (2019年9月20日 13時) (レス) id: b7f00b86d0 (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - あまーい！！実は木兎さんが主人公に片思いをしていたこともめっちゃ胸キュンでした！！本当に小鈴さんの作品大好きです！！！！！ (2019年9月19日 13時) (レス) id: 1ffe4440e9 (このIDを非表示/違反報告)
すいか(プロフ) - めっちゃキュンってくるのと、赤葦のかっこよさが、いつもより増してまじでよかったです！他の作品も読んでみようと思います (2019年9月18日 20時) (レス) id: 2af2bdbcf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年9月7日 19時
