休憩ドリンク ページ9
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「最近、踊れるようになってきて、…少し、楽しいって思えました」
ならよかった。そう言って小さく笑う部長。
「Aは誰かを応援したくてチア部に入った。それの何がいけない?」
その言葉に、胸が軽くなったと同時に熱を帯びていく。
「ただし」
ニヤリ口角を上げた部長が、私の肩に腕を回す。
「当然、私たちの目標にも付き合ってもらうけどね?いい?」
「…は、はいっ!」
思わず立ち上がった私に、部長が大袈裟に笑った。
「じゃ、一回通しでやるよ。音準備して」
「はい!」
それから、部長はほぼ毎日、練習後の私の自主練習についてくれた。
自分でもわかるくらいに、上達した。
毎日の朝のランニングの成果か、今までは兎に角踊りきることで精一杯だったのが、笑顔を崩すことなく全て踊りきることができるほどの体力がついていた。
*
それから数日経ったある日の放課後。
私は休憩時間に外の空気を吸うために、タオルを片手に外の石段で風を浴びていた。
涼しい。風が気持ちい。
最近は自主練習を部長がついてくれているお陰で、かなり上達したし、みんなについていけるようになった。
これで、やっとスタートラインだ。
馬鹿みたいに拳に力を入れて、ふん!と鼻から息を吐いたとき────
「ひっ!」
頬に冷たい感覚。体が跳ねる。
顔を横に向けると水滴がついたペットボトル。
「お疲れ」
「五色くん!?」
そこにいたのはスポーツドリンクを差し出す五色くん。
「あ、ありがとう」
私は差し出されたペットボトルを受け取る。
冷たい。
「五色くん、こんなところで何してるの?」
私の横に腰に手を当てて立っている五色くんに尋ねると、慌てたように「シッ!シーッ!」と口元に指を立てる。
「俺らのとこマネージャーとかいないから、ドリンク作りとか全部一年がやるんだよ。べ、別にサボってるわけじゃないからな!俺は練習してエースになるんだから!」
「五色くんは、やらなくていいの?」
私の言葉に、五色くんが顔を歪める。
「きっ、休憩だ休憩!」
うん、そうだ。と自分に言い聞かせるように言う五色くんに、もしかしたら自分のために飲み物を持ってきてくれたのかなって淡い期待を抱いていたりもした。
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あまね(プロフ) - 3年ぶりも大好きです (2月18日 3時) (レス) @page42 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
hwanieee - 私が好きな自信満々ででもまだ完璧じゃなくて繊細な五色くんがいて感動しました! (2月12日 10時) (レス) id: 307954f471 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年8月14日 20時) (レス) id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
和敬 - 出会って1年と経ちますが、今でもこの小説だけは何十と読み直してる位 大好きです。甘酸っぱくて、だけどちょっと、もどかしさもあって 。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2020年11月9日 0時) (レス) id: a0a88ff10f (このIDを非表示/違反報告)
てつこ - 最高の夢をありがとうございます (2020年1月28日 1時) (レス) id: d5585a65a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年8月25日 22時