牛島さん と 五色くん ページ29
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「私、人数が合わないならラグビー部の応援に行きます」
凛とした声ではっきりと言うその横顔は、真剣だ。
「部長、私もラグビー部の方に行きます」
「あの、アタシも。そっちで、いい…です」
「私は譲るとかじゃなく、ラグビーの方に行きたいです」
次々に一年生が手を挙げる。
私は自分だけがわがままを言っているのではないかと、学年を半分にするとはいえ、やはり後輩は選べる立場ではないのではと、自分を責め立てる。
「あの、やっぱり私、」
「私たち、Aが夜遅くまで残って練習しているの知っているので」
「Aが行きなよ、バレー部の方」
「あとはうちらで人数調整するし」
一年生の部員のみんなが振り返って私に言う。
「それに、アレでしょ」
‘五色くん’ と、耳元で囁かれて顔が熱くなる。
「そんじゃ、一年は一年で決めて」
私は頭が上がらなかった。
そして、バレー部の応援に行くことが決まった。
*
春高代表決定戦前日。
掃除当番で外の枯れ葉を箒で掃いていたときだった。
少し肌寒くなってきた。
なびく長い髪を耳に掛けると、後方から声が聞こえて振り返り恐る恐る近づく。
壁から顔を覗かせると、五色くんの姿が見えた。
「ご___」
「牛島さん!」
呼び止めようとしたが、叫んだ五色くんの声に、私は思わず私は隠れるように校舎の壁に背を預けた。
五色くんと、バレー部のエースの人…?
「五色か。どうした」
低い、声。
顔を覗かせると、五色くんと威圧的な目をした牛島さん(?)。
ピリピリとした緊張感がこっちまで伝わってくる。
「俺、貴方を越えて、白鳥沢のエースになります!」
決心したような、そんな声が響いて、でもそれは風に乗って遠ざかっていく。
私は壁に背を預けたまま、箒を握る手に力を込める。
でもそんな五色くんの言葉とは裏腹に、
「あぁ」
牛島さんはやけにあっさりと返事をして、立ち去って行った。
悔しそうに、でもどこか敬うような視線でその背中を見ている五色くんに、私は声を掛けることはできなかった。
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あまね(プロフ) - 3年ぶりも大好きです (2月18日 3時) (レス) @page42 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
hwanieee - 私が好きな自信満々ででもまだ完璧じゃなくて繊細な五色くんがいて感動しました! (2月12日 10時) (レス) id: 307954f471 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年8月14日 20時) (レス) id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
和敬 - 出会って1年と経ちますが、今でもこの小説だけは何十と読み直してる位 大好きです。甘酸っぱくて、だけどちょっと、もどかしさもあって 。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2020年11月9日 0時) (レス) id: a0a88ff10f (このIDを非表示/違反報告)
てつこ - 最高の夢をありがとうございます (2020年1月28日 1時) (レス) id: d5585a65a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年8月25日 22時