独占欲 ページ48
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「へえ。なに、お前嫉妬とかすんの」
この日は黒尾と赤葦と、木兎の家に集まっていた。
「意外と可愛いとこあるんだな」
「そうそう、可愛いんだよ。あげないけど!」
「デレデレすんな」
「だってAは俺の彼女だもーん」
木兎と黒尾のそんな会話に、私は昔の自分を思い出しては俯いた。
顔、熱い。
「コイツ、高校の時は赤葦に嫉妬してよ〜。ほんっと可愛くてだな!」
「木兎もうやめて」
「だめだ、コイツ完全に酔っぱらってやがる」
黒尾が木兎のにやけた面をペチペチ軽く叩くけど、木兎は動じない様子。
「赤葦…」
隣に座る赤葦の服を引っ張る。
「なんですか。前はあんなに敵意むき出しだった相手に助けを乞うんですかAさん」
そんな憎まれ口を叩く赤葦だけど、小さく息を吐いては立ち上がり千鳥足の木兎をベッドへ促した。
「赤葦!俺はまだ飲み足りてないぞ!」と騒ぐ木兎を上手いこと誘導してベッドに寝かせた赤葦は、テキパキとテーブルの上を片付け始めた。
「いいよ赤葦。私やるから」
「もう俺たちも帰りますんで。Aさんは木兎さんの介抱をお願いします」
「だな。後は宜しく頼んだわ」
暫くして二人を見送った私は、木兎のもとへと向かった。
「木兎?二人帰っ、わっ」
急に伸びてきた手によって、私はバランスを崩してベッドに倒れこむ。
「お前なーんでアイツらの前で顔赤くさせてるんだよー」
顔を上げると、虚ろな目をした木兎が口を尖らせていた。
「あれは木兎が私が嫉妬してたとか恥ずかしいこと言うから…」
すると木兎が顔を私に擦り寄せた。
「Aいー匂い」
「飲みすぎだよ木兎」
木兎が私の腕をさらに引いて、体ごと抱き寄せ完全に密着する。
「A、キスマークつけていい?」
「え、やだけど」
「いーじゃん。見えないところ、にっ」
「痛ッ」
鋭いチクリとした痛みが首元に走る。
木兎が私の首元に噛みついた。
「痛いよ木兎」
「Aは俺のだって印」
「そんなことしなくても、私はとっくの前から木兎のなのに?」
「黒尾除け」
まるで昔の赤葦に敵対心を燃やしていた私みたい。
「A…」
ふいに木兎が私の名前を呼んで頭を撫でたとき、私の顔は爆発しそうなくらい真っ赤だった。
次の日。鏡を見た私の首筋には、くっきりとした歯型と、複数の赤い跡が残っていた。
それから数日間は蒸し暑い体育館の中で一人、ジャージの上着を脱げずにいるのだった。
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アニメしか勝たんっ!! - やっぱり、木兎さんはかっこいい...! すっごくキュンキュンしました! それと、赤あしの片思い... 素敵な作品ありがとうございました!! (2021年9月6日 19時) (レス) id: a9d6af11eb (このIDを非表示/違反報告)
しきし(プロフ) - 木兎が好きで色々な木兎作品を読みますが、結局小鈴さんのこの作品に戻ってきてしまいます、何度読んでも好きです!! (2020年8月21日 20時) (レス) id: 46b82dd2cd (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 尊い。私ごときの語彙力じゃ表せないです。なんか、もう、尊い。 (2019年11月24日 22時) (レス) id: 4e49721770 (このIDを非表示/違反報告)
c.f(プロフ) - 番外編読みました。私のツボを抑えておられますね…最高です。そして実は短編集とかもいける口では…?と思ってしまうほど纏まった内容でドキドキが止まりませんでした!また更新楽しみにしてます! (2019年10月4日 21時) (レス) id: 05c431cb99 (このIDを非表示/違反報告)
江(プロフ) - 通知がきて飛んで来ました!やっぱり木兎さんの書き方上手ですね。強引な感じも好きです。そして作者さんも好きです。これからも楽しみにしてるので更新頑張ってください!!! (2019年10月3日 18時) (レス) id: 1247715456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年7月30日 20時