覗き見 ページ34
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「お、おい見ろよA」
「見てる、見てるから少し静かにして」
「だって!だって!興奮せずにいられるかよ!」
「バレたらどうするの!」
校舎の陰から身を屈めて顔を覗かせる私と、隠れるつもりなんて微塵もないように鼻息を荒くしている木兎。
「いや、だってAだって気になるだろ!」
「気になる、けど…」
「ふははは、これでバレたときは俺たち同罪だな!」
「シーッ!だから木兎声大きいんだって!」
後ろに立つ木兎が私を押しのけて前に出ようとするのをネクタイを軽く引いて阻止すると、少し苦しそうな呻き声。
「つうか俺に何の相談もないとは何事だアイツは!」
「一回落ち着いて」
「俺は先輩だぞ!」
「落ち着け!」
「落ち着いてられっか!」
注意した直後はいったん落ちる木兎の声のボリュームも、しばらく経てば元に戻る。
こういうときの木兎を静かにさせるのは至難の業。
「ん〜、全っ然聞こえないな」
腕を組んで「う〜ん」と唸る木兎に、私は必死に聞き耳を立てる。
微かに聞こえる、細い声。
「す、好きです…!」
髪の毛に緩くパーマがかかった可愛らしい女の子の顔は真っ赤。
「なあなあA!今好きって聞こえた!?なあなあ!」
後ろから木兎が勢いよく私の肩に腕を回す。
―――ただいま私は、木兎に引っ張られるがまま、赤葦の告白される現場を覗き見している真っ最中。
全く悪趣味です。
これ、バレてませんか…?
「そんで、あかーしなんて?全然聞こえねえ」
赤葦の低い声が、風に邪魔されて聞こえない。
こちらに背を向けているせいで赤葦の表情も見えない。
もしかしていつも無表情の赤葦が顔真っ赤にしてたりして。
想像して「ぷぷ」と吹き出す私に「なになに!?」と木兎が楽しそうに私を揺らす。
「あれ?もう終わった…?」
女の子が向こう側に走っていくのを見届ける赤葦。
え、なにどういう状況…?
もう終わったの…?
「え〜なになにどうなったんだよ〜」
「木兎頭揺れる頭揺れるから!」
視界がぐらつく。
「なにしてるんですか」
視界の揺れが収まった時には、目の前に赤葦が立っていて。
しゃがむ私と木兎を、その冷え切った目で見下ろしていた。
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アニメしか勝たんっ!! - やっぱり、木兎さんはかっこいい...! すっごくキュンキュンしました! それと、赤あしの片思い... 素敵な作品ありがとうございました!! (2021年9月6日 19時) (レス) id: a9d6af11eb (このIDを非表示/違反報告)
しきし(プロフ) - 木兎が好きで色々な木兎作品を読みますが、結局小鈴さんのこの作品に戻ってきてしまいます、何度読んでも好きです!! (2020年8月21日 20時) (レス) id: 46b82dd2cd (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 尊い。私ごときの語彙力じゃ表せないです。なんか、もう、尊い。 (2019年11月24日 22時) (レス) id: 4e49721770 (このIDを非表示/違反報告)
c.f(プロフ) - 番外編読みました。私のツボを抑えておられますね…最高です。そして実は短編集とかもいける口では…?と思ってしまうほど纏まった内容でドキドキが止まりませんでした!また更新楽しみにしてます! (2019年10月4日 21時) (レス) id: 05c431cb99 (このIDを非表示/違反報告)
江(プロフ) - 通知がきて飛んで来ました!やっぱり木兎さんの書き方上手ですね。強引な感じも好きです。そして作者さんも好きです。これからも楽しみにしてるので更新頑張ってください!!! (2019年10月3日 18時) (レス) id: 1247715456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年7月30日 20時