八十九通目 ページ40
家に帰ると、なぜか寂しく感じた。
ポストは相変わらず空っぽ。
スマホに連絡もない。
…あんなことがあったから、当たり前なんだけどね。
彼は今、私なんかに構ってられるほど余裕がないだろうし。
…このまま縁が切れても…
それが、彼のためになるならそれでいい。
ズキズキと胸が痛むけれど…。
いつかこんな日が来るって、どこかでそう思ってた。
彼と会った日から、もう二週間。
彼からの手紙がない日々は、なにをしていたのか忘れてしまうほど、退屈だった。
「…倉本さんのお返事も、ずっと待たせちゃってるし」
早く返事がしたいのに…
何故か踏みとどまってしまっている。
倉本さんとも時々連絡を取ってるけど…
気長に待ってくれている。
…彼もすごく優しい人なのは分かってる。
…でも…。
その時。
プルルルル…プルルルル…
いきなりスマホが震えて、急いで受話器を取った。
「は、はい！もしもし」
「あ、Aさん？」
その声は…あの甘くて低い声じゃない。
「倉本さん…」
何を、期待してたのか。
呆れて自分を嘲笑う。
こんなの倉本さんにも失礼だ。
気持ちを入れ替えようと、ベランダに出て風を浴びる。
「桃花ちゃんから聞いたんだ。最近Aさんの元気がないって」
「えっ…」
「それで気になっちゃって…ごめんね、いきなり電話して」
「あ、いえ…やだ、私そんな風に見られてたんだ…すいません、ご心配おかけして」
「…何かあったの？」
「…いいえ、少し、ショックなことがあって…」
「…俺には言えない？もしかして、元カレのこととか？」
「そんなんじゃないですよ笑」
…このことは、誰にも話せない。
これは、私とあの人だけの問題だから。
「…気になるよ、俺本当にAさんのこと好きだから」
「っ…ありがとうございます…」
…あの日の返事、今がチャンスなのかな。
まだ、倉本さんのことが好きなのか分からない。
でも、彼を知って、好きになりたいって気持ちはある。
私はそうやって…
壱馬さんのことを忘れようとしてる…。
こんなの、最低だ…。
「…あの、私…」
今はあなたのこと好きとは言えないけれど…あなたのことをもっと知りたい。
そう言おうとしたときだった。
スマホが震えた。
画面に書かれた文字に、目を疑った。
…川村壱馬。
壱馬さんからの電話だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 782人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彼岸花(プロフ) - 夜宵-yayoi-さん» コメントありがとうございます！続編もよろしくお願いします！ (2023年2月19日 23時) (
レス) id: ea547107ff (このIDを非表示/違反報告)
夜宵-yayoi-(プロフ) - 続編楽しみにしてます！ (2023年2月19日 21時) (レス) @page50 id: 213e291fb2 (このIDを非表示/違反報告)
彼岸花(プロフ) - 紫雨さん» コメントありがとうございます！続編も見ていただけると嬉しいです！！ (2023年2月19日 21時) (レス) id: ea547107ff (このIDを非表示/違反報告)
紫雨(プロフ) - 続編楽しみにしてます！ (2023年2月19日 19時) (レス) @page50 id: 1db2654d16 (このIDを非表示/違反報告)
彼岸花(プロフ) - 紫雨さん» コメントありがとうございます！幸せになるまでもう少しかかりますので気長にお待ちいただけると幸いです！ (2023年2月17日 21時) (レス) @page46 id: f47c3cd118 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彼岸花
| 作成日時：2023年1月24日 18時
