君に会えるから (ページ41)

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歩み Yuta Side ページ41

Aと家を出て俺は奈々に連絡を取った。近くのカフェに春樹も連れてくるように、と。

電話を切ってからというもののAは下を向いて歩いている。そうなっても仕方がないのは100も承知だった。
俺は手を引いて目的地へと歩いた。

ｶﾗﾝｺﾛﾝ

「いらっしゃいませー！」

店員の明るい声が店の中に響く。俺たちの方が先に着いていたみたいだ。俺はコーヒーを注文した。

裕「Aは？」

貴「……オレンジジュース」

苦いものが苦手なAは少し間を置いてオレンジジュースを注文した。そんな所にも可愛さを感じていた所、入口に目を向けると奈々と春樹が歩いてきた。

俺達を見つけるとこちらに向かって歩いてきたのだ。

「お待たせ～」

裕「うん。来たばっかりだよ」

奈々と話していても一向に目は合わず奈々はAの方を見ていることがわかった。

裕「…ところで本題なんだけど。」

俺は淡々と話し始めた。なるべく感情的にならずに、的確に伝えるために。

裕「誰が悪いとか言いたいわけじゃないのはわかって欲しい。ただもうこれで終わりにしたい。」

「終わりにしたいも何もAは罪悪感とかないわけ？」

怒りの矛先はAに向いた。奈々はずっとAを見つめる。春樹は話を聞いているのかすら分からない。

貴「もちろんあるよ…。でも裕太じゃなくて春樹を選んだのは奈々だよ…裕太は選択権をくれたはず。」

Aはいつもと比べ物にならないほど強かった。俺は少し驚きながらもAは続けた。

貴「奈々は私が裕太を奪ったって言ったよね。でも裕太は奈々を奪われちゃったんだよ？」

奈々は黙りこくってしまった。しばしの沈黙の後遠くを見つめていた春樹が口を開く

「お前が捨てたんだろ？捨てたもの今更になって取り返そうなんて無駄だろ。諦めな」

冷たい口調でピシャッと奈々に言い放った。奈々は今にも泣き出してしまいそうな顔になっていた。

貴「奈々…ごめん。だけどもう私は後に引くつもりはないよ。あの時私が気持ち隠したせいでこんな事になるなんて思わなかった。」

「Aのせいじゃないよ…私がAが優しいからって漬け込んだの」

Aを睨んでいた奈々の目はスっと優しくなった。
Aも奈々を見て涙が溜まった目で微笑んでいた。

裕「これで払っておいて。じゃあ」

2人の言葉を遮るように店を出た。
俺は思い切りAを抱きしめた。もう離れないように、離さないようにいつもより強く。