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翼を。144 ページ28
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「翡翠はそれが強かった。だから、新しくヒスイの物語を紡ごうとしても、元々の翡翠のイメージが抜けない」
監督の指示は提案で、役者がどうするのかを決める。オレにはそれができなかった。
彼の思い浮かべる翡翠を体現するためだけに、オレはあの場所で生かされていた。
「折角綴くんが書いてくれたのに、不甲斐ないよ」
所詮オレは、操り人形でしかなかったんだ。
その事実に気づいた瞬間、ここにいることが辛くなる。あんなに輝いている皆の隣に、こんなやつがいてもいいのだろうか。
苦しい。
今は何でもマイナスで捉えてしまいそうだ。何か口走ってしまう前に、部屋に戻ろう。こんな状態で稽古なんかでたら、逆に迷惑をかけてしまう。
「ごめん、咲也くん。今の話、聞かなかったことにしていいから＿＿」
「Aさんは……Aさんは、自分の役を自分で理解したいんですよね？」
「え、？」
"自分の役を自分で理解したい"。
確かにそうだ。誰かが思い描く翡翠じゃなくて、オレの感じたヒスイを演じたい。
でも、それがわかったくらいで何ができるのだろう。
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作者名：彩崎葉 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ksmkrn12211/
作成日時：2019年12月8日 10時
