雪 (ページ16)

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灰色の変わり果てた彼女の姿に
それでも心が軽くなる感覚に、気が付いた

水の中に入った白いカーネーションは
灰色の隣に並ぶと、あまりに冷たい

神ちゃんは俺に何も言わず、
この場から離れていった

しゃがむことも億劫だった
首を少し傾けて、彼女の目を見る
この感覚は、懐かしい

「なあ、俺、そんなに、頼りなかった？」

下手くそな笑顔を浮かべる

「もっと、分かりやすく言ってくれんと、俺分からへんわ」

漏れた笑い声は白い息となって彼女に届く

言いたい言葉は、そんな言葉じゃ無い

「…っ」

もう、すっかり疲れてしまった

Aが、何も言わずに何処かへ行ってしまったから

どれだけ探してもどこにもいなかったから、

Aの手を、見て見ぬ振りしてしまったから
Aの言葉に、聞こえない振りをしてしまったから
Aがいなくなるなんて、考えたくもなかったから

「…」

歪んで淡くなった景色の中でも
彼女の姿は灰色のままだ

「ごめんな…」

地面に少しずつ、白い模様が浮かび上がる

「ほんまは気付いてたのに…救えんかった」

君が楽しみに待っていた雪は、結局降ることはなかった
　

「A…」

愛していた、

その言葉が、「愛している」に変わるまでには
もう少し時間がかかりそうだ

「ほら、見てみ」

きっといつの日か、この景色も白く染まる

「雪、降ってんで」

降り始めた雪は、まだ、積もらない

雪.