雪 (ページ13)

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「…っ」
　

親友の目に浮かんでいた苦しさを含んだ涙に、
何もできない自分が、嫌いだ

「Aから、病気のことは言わんといて欲しいって、」

それは、寂しさというより、悔しさが滲み出た声

「どうすれば俺は彼女を救えたんや」

惨めだと気付いている。

「俺は、なんで何もできひんかったんや」

最低で最悪だと、分かっている

「なんで、しげを救えんかってん…俺は」

親友は悪くない、と
その不格好で不器用な優しさで
親友を傷つけて苦しめていたことも

彼女が言わなかったからではなくて、
自分が彼女からすべてを聞くのを恐れていたことにも

変えることができた未来の選択肢を
自分から手放したことにだって

全部、気付いていた

　

「っ…」

　

声にならない言葉が、神ちゃんの口から漏れて
輪郭を帯びないまま、空に消えていく

「…なんで、何も言わんねん」

後悔に滲んでいた声は、
少しずつ苛立ちに変わっていく

「…なぁ、しげ！」

俺の胸ぐらを掴んだ親友の手は
あまりに強く、あまりに弱い

「なんで俺に何も言わんねん！なんでそんな！」

　
自分だけが苦しめば良いと
勝手に１人で抱え込んでいた

けれど、それが間違いであることも
これで親友を苦しめていることにも気付いていた

当然だ

「…っ、俺はどうすれば良かったんや」

こんな俺は、愛されなくて当然だ

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