ほつれたリボン ３−�� ページ39
なにぶん高所にいるものだから、シャルルはポッターの「こっちへ渡せよ」という強く発音した部分しか聞き取れなかった。唇の動きやせせら笑おうとして失敗した顔のドラコを見るに、原作と同じようなことを言っているみたいだが、「シャルル」という単語が過ったように見えて、眉を寄せる。気のせいだろうか。
間を置かず槍のように飛び出したポッターは危うげに躱されたものの体勢を崩さず、鋭く一回転した。新入生とは思えない攻防に拍手が弾ける。
それに気を悪くしたドラコは腕を振り上げた。掌の檻から解放された硝子玉は放物線を描いて、ある一点を過ぎた途端に稲妻のように落ちていく。それを追うようにポッターが急降下した。地面すれすれのところで玉を掴み、間一髪で箒を引き上げて水平に立て直し、転がるようにして軟着陸した。
シャルルはそそくさと地上に降り立とうとするドラコを見上げ、早く戻って来るように顎で示した。彼は若干動揺した素振りを見せつつもそっぽを向く。シャルルは頬を引き攣らせる。
「ハリー・ポッター……！」
マクゴナガルの息を呑むような声が聞こえ、生徒が一斉に振り返った。数多ある城の窓から目撃したのか、たった今駆けつけたところらしい。
首の骨を折ったかもしれないのに……と眼鏡を激しく光らせている。首についてならロングボトムと同じなのに微妙な気持ちになったが、おそらく魔法族としての記憶のみを持っていた頃の自身でもマクゴナガルと同じ反応をしただろうとも思った。マグル育ちであることを抜きにしても凄まじい飛行技術である。
マクゴナガルはポッターを弁護するパーバティ・パチルとウィーズリーをあしらい、可哀想にも青い顔をしているポッターを連れて城に向かって歩き出した。ドラコ達が勝ち誇る。
シャルルは幼馴染を絶対に慰めないと固く決め、いつの間にか戻ってきたフーチの苛立たしげに言った「皆さんのことがよーくわかりました！ 座学から始めますよ！」に従って箒を元の位置に置いた。万が一にもシャルルを天高く引っ張っていかないように。
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作者名：砂な | 作成日時：2023年3月25日 23時
