第一章その2(訂正あり) ページ4
声の元を辿ると、正面から赤い鎧を纏い、首に赤いマフラーを巻いた女が微笑みを浮かべて私とシーザーの元へ歩いてきた。
「リサリサ様!舞踏会の警備ですか?」
「ええ。親衛隊長としての務めですからね…」
彼女の名はリサリサ・ジョースター。優れた剣の使い手で、女性でありながら親衛隊長を務めている。かつて『三英雄』と呼ばれた勇者の1人。
そして、私を育ててくれた義母でもある人だ…
「それにしてもエマ…そんなに畏まった態度を取らなくても、昔のように“母さん”と呼んでもらっても構わないのですよ?」
「そういうわけにも行きませんよ!例え親子でも、今は親衛隊長様としがないメイドなのですから!」
「おまえそういう所はしっかりしてるんだな…」
「うっさいなシーザー!」
私とシーザーのやり取りを見て、リサリサ様は『ふふ…』と微笑む。
「エマ…あなたがここに仕え始めてもう一年…メイドの仕事は慣れたかしら?」
「はい!まあなんとかやっていけてますよ!」
「さっきサボろうとしてたくせに…」
「だからシーザーは黙ってて!
…あ、そうだ!ジョセフの方は元気ですか?」
「ジョセフ…ですか…」
ジョセフ、というのはリサリサ様の息子で、私の義理の兄に当たる。シーザーともしょっちゅう喧嘩してたけど仲良かったっけ…
「あの子は元気すぎて困ってるほどよ…昨日だって街のゴロツキたちと乱闘騒ぎを起こしたもの…」
「でもジョセフが勝ったんでしょ?」
「勝ったどころか、かすり傷一つ負わなかったわ…」
「相変わらずだなあのスカタン…あまりリサリサ様に迷惑かけないでもらいたいものだ。」
私たちが苦笑を混じえて話す中、シーザーは腕を組みそう呟くと、『そういえば…』とリサリサ様の方を向いた。
「リサリサ様、不作による食糧不足の問題…いよいよ深刻になっているようです。」
「そう…やはり…」
真剣な顔をしたシーザーが持ち出した“食糧不足”の話題によって、私たちの空気は先程と違って重いものになった。
「…最近、ディオ様のご機嫌が悪いのは、やっぱり食糧不足のせい…?」
私が尋ねると、リサリサ様は肩をすくめた。
「…えぇ。食糧不足といっても、王宮にまだ貯えはあるはず…それを飢えに苦しむ民にわけてあげられたらいいのですが…ディオ様は首を縦に振ってくれないのです…」
「あの王子様に意見できるのはリサリサ様だけだな…」
多少呆れ顔でシーザーは言う。
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作者名:あんず | 作成日時:2019年12月8日 21時