□ 記録8 ■ ページ10
彼にとってそれは、サエウムにピウスの様子を見てくると告げ、丁度目に止まったのがナイフだっただけの話だ。
バレないようにそれを持ち出し、ピウスを見つければ後ろから声をかけようとして止まった。
驚かすだけのつもりだった。だが、実際にピウスを見てみるとどうだ。何か、何とは言い切れないが、色にすればどす黒いような感情がわきでてくる。
「な、なん……」
口を開いたピウスを黙らせるようにアルマはナイフを持つ手に力を込める。
つ、と紅が垂れ、ピウスは口を噤んだ。
「あは、……僕さぁ、前から君のこと、好きじゃなかったんだよね」
冷たい声。笑みが消えた顔。
いつもと違う様子のアルマに、ピウスは焦っていた。
「………そういう台詞は…本人の前で言うもんじゃありませんよ…っ」
弱く見せるよりは、と、ピウスは虚勢を張るも、それが余計に殺気を掻き立てたのか、更にナイフが食い込む。
「なぁに虚勢張ってるのかな…?」
やはり、虚勢を張っていたことはバレていたようだ。
「やだなぁ…大人の余裕と言って下さいよ……」
「君は大人じゃないだろう?それを言うなら大人“な”
余裕…でしょ?」
アルマは口角を上げるが、それは只の真顔であった。
笑顔が笑顔に、見えない。
ピウスの首の冷や汗が、滴る血と混ざり合い、首筋を撫でるように伝っていった。
異様なまでの静寂に、規則的に鳴り響いているのは、ピウスの心臓だった。
その心音は、今に消えようとしているのであった。
「アルマ……?」
ピウスと、ピウスの後を追うように出ていったアルマがなかなか厨房へ戻って来ないことにそろそろ不安を覚え、こっそり様子を伺いに外へ出たサエウム。
建物の陰に隠れながら歩を進めていくと、ふと声が耳に入ってきた。
しかし、遠すぎるせいか、肝心な内容が入ってこない。
バレないように警戒しながらこっそりと建物の陰から顔を出す。
すると目に飛び込んできたのは、ピウスを今にも殺してしまいそうな程、ナイフを首筋に食い込ませるアルマと、首筋に赤い血が滴り、強ばった表情のピウスだった。
アルマのその様子は、いつもとは全く違うものだった。
氷を連想させるような冷たい瞳。
その瞳に光は宿っていなかった。
底無し沼のように、どす黒かった。
そんなアルマを見たサエウムは、自分でも意外なほどに。
戦慄した。
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あき(プロフ) - ぬーん(´`)さん» 返信遅くなってしまい誠に申し訳ありません!とっても嬉しいです、ありがとうございます!もうそろそろ更新できそうなので頑張りますね!ピウスさん私も好きですよー。 (2020年9月26日 21時) (レス) id: f9bd0e9f58 (このIDを非表示/違反報告)
こきあ(プロフ) - ぬーん(´`)さん» 沢山のお褒めの言葉、とても嬉しいです、ありがとうございます!これからも面白い作品作りに精進して参りますので、応援の程宜しくお願い致します!あ、私もピウス君好きです! (2020年9月20日 23時) (レス) id: 2afde1be33 (このIDを非表示/違反報告)
ぬーん(´`)(プロフ) - 夜分遅くにコメント失礼します…! え、え、凄く面白いです…! 個性的なキャラや、言い回し、圧倒的な文章構成力…!! しっかり作り込まれた一次創作本当に好きです…。文章だけでピウスくん好きになりました(*´`*) (2020年9月20日 23時) (レス) id: 554c742bde (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - サワーさん» さわんぬぁぁぁ!そう言ってくれて嬉しいです!ありがとうございます!これからも頑張るのでよろしくお願い致します! (2020年9月16日 17時) (レス) id: f9bd0e9f58 (このIDを非表示/違反報告)
こきあ(プロフ) - サワーさん» 二人で一生懸命練り上げたキャラクター達なので、そう言って頂くと本当に嬉しいです!これからも、サワーさんのことを飽きさせない作品作りに努めますので、応援宜しくお願い致します! (2020年9月15日 23時) (レス) id: 2afde1be33 (このIDを非表示/違反報告)
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