闇オークション職員の憂鬱

■　記録2 ページ3

「老若男女、今宵、この会場にいる全てのお客様へ、心から感謝の気持ちを述べさせていただきます！

…さて、本題に入ります、今夜の目玉商品のご紹介といきましょう。今回は余興のお話をご用意出来ませんでした。なにぶん忙しい時期でしてね……おっと、話が逸れてしまいました。今回の目玉をご覧に入れます。こちらです。

…大目玉はこの壺でございます。この黒光りする表面の、つるつるとした手触り、そしてこの、吸い込まれそうな程に黒く見える壺の中。その穴に手を入れれば、異次元にでも飛ばされてしまうのではないかと思わせるほどです。

また、模様も美しい。鮮やかな色で複雑な模様が描かれています。一部には綺麗な蝶々の模様も描かれ、優雅な雰囲気を作り出してくれています。

いやぁ、皆様、食い入るように見ていらっしゃいますね……では！ 早速オークションを始めましょう！ この壺は、10万ディネロから！ さあ！ 早い者勝ちですよ！」

サエウムの演説でオークションが始まる。
15万、20万、30万と高くなっていく数字に壁の染みとなっていたアルマは顔を綻ばせた。

「あは、いいよねぇ。オークションって。ね、ピウスもそう思わない？」

「……何がですか？」


アルマの隣に立っていたピウスはその問い掛けの意味が分からず、質問に質問を返す。

「人間の歪んだところを見れるんだよ？ ……最高じゃないか」

興奮したようなアルマの目付きに聞かなければよかった、と早くも後悔したピウスは思い出す。

あぁ、そーいやこいつも金とか関係なしに自分の私欲を満たしに来てるんだっけ。

実際にアルマは人間の歪んだところが大好きなのだ。それを見たいがためにオークションに勤めるなど尋常じゃない。その事実をピウスは理解しているからこそ、少し近寄りがたいと感じている。
そもそも、いつもつけている敬称もなし、自分を呼び捨てにしてきた時点で彼の苦手な内面に気付くべきだった。



「…………別に俺は、貴方みたいに狂ってませんが？」
「ひっどいなぁ、僕はこーんなにも美しいのに！」

「ちょっと黙ることって出来ません？」
「なんでさ、黙る必要なんかどこにもないだろう？」

「ありますよ、うるさいです」





それと同時にナルシストでもあるアルマの扱いは面倒くさいらしく、段々と大きくなっていく値段をBGMとしながら遠い目をしている。

確かにアルマの声はうるさ、通常よりかは大きいので、迷惑であることに越したことはないのだが。

□　記録3→←□　記録1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す