闇オークション職員の憂鬱

□　記録16 ページ18

「お前ら一体何が何だかわかんねぇよ。何がしたいんだ？」

サエウムがうんざりしたように二人へ問いかける。

質問に対し、二人は一拍置いた後に息を揃えて言い放った。

「多分狂ったことをしたい」

ふふ、と軽く笑ってみせたアルマは

「殺されるくらいなら、殺して相手の人生を終わらせる方がいい」

それを聞いたピウスは、相対するかのように

「殺すくらいなら、殺されて相手の人生を狂わせる方がいい」

そんな二人の異様な様子を見たサエウムは、先程よりも更にうんざりしたように、深く重い溜め息を吐いた。

そして、悪態をつくように後頭部を掻き、あー、と唸るような声を漏らし、頭の中で言いたいことを整理する。

ピウスにもアルマにも劣る頭脳ではまとまらないかもしれないが、ここは流石サエウム。

毎回オークションでのスピーチを担当しているだけあって、自分の言いたいことをすぐにまとめあげた。

「いいか？オークションに殺伐なんてこれっぽちも求められてねぇんだよ。あるのは金だけだ。お前らだって大事な職員だ。こんなところでへたれてもらっちゃあ困るんだよ。殺し殺されの世界はここて繰り広げるべきじゃない。お前らの仕事の中には死なないってのと殺さないってのもあるんだよ。分かったか馬鹿共」

捲し立てるように言ったサエウムの剣幕に、一瞬圧されつつも、アルマは馬鹿という単語に憤りを感じたようで、

「僕が馬鹿だって？ 何を言っているんだい君は。いいかい？ 僕は格好よくて頭が良くて……」

と、いつものように己の美しさを語り始める。

ピウスはそれを聞いて、呆れ返って

「本当に、自分を褒めてばっかりなのに何で頭が良いのか不思議ですよ」

と、息をするように毒舌を吐く。

双方、本調子を取り戻したようで、生き生きとした声に変わっていた。

そんな二人の様子を見たサエウムは、ほっと安堵の息を漏らし、小さく笑った。

「……っはは、相変わらずだなお前らは…そっちの方がらしいぜ」



背伸びしながら先に部屋を出たサエウム。

部屋に取り残されるようになったアルマとピウス。

「さ、俺たちも行きましょうか、アルマさん」

「ん、そうだねー」

いつものような会話をかわし、部屋を出ようとしたその間際、ピウスが動きを止めてふと言った。

「あぁ、そうだ。……アルマさん」

「どうしたの？」

「殺せるもんなら、殺してみてくださいよ」

そんな挑発的な言葉に、アルマはにやりと笑って応える。

「……はっ、望むところだよ」

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