薬屋と妓楼の少女 (ページ4)

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三話予感ページ4

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下級妃は後宮内で個室を持てる事になっている。

しかし場所は宮内の端にあり、皇帝の目につく事は滅多にない。それこそ一生分の幸福だ。

それでも一度夜伽を命じられれば部屋の移動、二度目の御手付きは出世を意味している。

『でも、食指を動かされなくて適齢を過ぎたら位が下げられるか官に下賜されるんだよね』

「よほど実家の権力が無い限りね」

『宦官に下賜されたら大変だなあ』

実際官女たちは宦官に下賜されるのを恐れている。誰だって男でない者に嫁ぎたくは無いはずだ。

部屋にたどり着いた猫小姐は扉を軽く叩く。

「そこに置いておいて」

扉を開け無愛想な返事をする部屋付きの侍女。

中では、甘ったるい匂いを漂わせた妃が酒杯を揺らしている。妓楼でよく見た光景だ。

宮内に入る前は誉めそやされた美しい容姿でも、所詮井の中の蛙だったのだろう。

「(最近は部屋から出ようとしなくなったとか)」

『(部屋の中じゃ、お迎えはきませんよ...)』

隣の部屋にあった洗濯籠をもらうと、猫小姐と私はまた洗い場に戻った。

『猫小姐。仕事はちゃんとするよね』

「給金は貰ってるし。それなりに」

基本は真面目。それが我が姉、猫猫である。

そしてその姉を慕う妹は目を前髪で隠して「目立たない」が第一の人見知り。

『「(大人しく働いてればそのうち...)」』

残念な事に2人の考えは甘かったといえる。何が起こるかわからない。それが人生というものだ。

齢十七の娘達にしては達観した思考の持ち主と技量であるが、それでも抑えられないものがあった。

姉は知識欲。妹は好奇心。そして、少しの正義感。

後宮で生まれる乳幼児の連続死。

先代の呪いだといわれたそれは、双子の姉妹にとって怪奇でも何でも無かった。

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