薬屋と妓楼の少女 (ページ28)

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二十七話調達開始ページ28

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《万能薬という言葉はあれど、

実際に万能薬であるは薬はこの世に存在しない》

これは私達を育ててくれたおやじさんの言葉だ。

この言葉に反感を持つ反抗期が、私達にもあった。

どんな病にも、どんな人間を効く薬を作る猫小姐を妹として、全力で手助けしたい。

その時だけは舞や碁の事など目に映らなかった。

そんなわけで、他人が目を背けたくなる傷を作る猫小姐に目をつぶってきたわけだ。

だが未だに、万能薬は完成の目途はない。

『(ほんっとあの宦官は気に食わない)』

あの麗しい宦官が持ってきた話は、猫小姐の興味を引くには十分な話であった。

「後宮に来てから甘味しか作れなかったんだ」

『だから今回ばかりはやっても良いって？』

「薬草は驚くくらい生えてたのに我慢ばっか...」

そりゃ道具や薬草を大部屋で使ってたら毒殺でも考えてんのか！？という話だ。

「本当、個室になって嬉しいよ」

『確かにそれは同感』

猫小姐と私は、材料の調達にと、竹の籠を持って出掛ける。だが表向きに、背負う籠は洗濯籠だ。

紅娘の計らいで、今後洗濯係は猫小姐になるだろう。恐らく私にも機会が巡ってくるだろう。

洗濯籠を届けに来たふりをしてある場所に向かう。

ここは、前もって言われていた医務室だ。中には、以前、うろたえていた医官と1人の宦官がいた。

『(あの人は...)』

確か壬氏によく付いている宦官だ。

医官は薄いどじょうのような髭に触れながら、値踏みするような目で私達姉妹を見る。

『(何故こんな小娘どもがって顔してんなあ)』

「(醜女をじろじろ見ないでくださいまし)」

やぶ医者め、と呆れた顔で見返してやれば、キッと睨みつけられたような気がする。

後宮には、どうやら苦手な人間が多いようだ。

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