36 ページ36
.
「...................A」
ふと名前を呼ばれて、ゆっくりと彼の手が伸びてきた。
その時、びくっと身体は思わず後退りをしてしまったけど。後ろが壁だと気付いて、ほんの少ししか動かなかった。
そのまま暫く、何も起きなかった。
いや、時間にしてみたらたったの数分かもしれない。だけど私には、その時間が途轍もなく長く感じた。
ゆっくり、本当に少しずつ顔を上げた私と。
葛葉が私の髪に、そっと触れたのは殆ど同時だった。
『＿＿＿＿ぁ、』
私はしゃがみ込んで葛葉は立っているままだろうと、ゆっくりと顔を上げた私。葛葉と目が合うのは、もう少し先だと思っていたのに。
いつの間にか屈んでいた葛葉も、私と同じくらいの目線にいて。デジャヴだ、と思った。
油断していた私は、至近距離で葛葉と目が合った瞬間。
私のリップが、葛葉の唇から少しはみ出して付いているのを目にした瞬間。
収まったと思っていた頬が、熱を取り戻した。
＿＿＿＿＿＿＿だめだ。
何をしても、この雰囲気に呑み込まれそうで。
本能に近い何かが、私に危険信号を鳴らしていた。
それでもじわり、じわり。
目を逸らすことが出来ずじっと視線がぶつかったまま。
きっと葛葉にも私の頬が火照ていることは、バレているんだろう。その事実が余計羞恥心を掻き立てた。
目の前の葛葉が口を開こうとするのを察して、その前に彼の声に被せる様に。
『わたし、帰る....!!』
そう言うのと同時に立ち上がって、逃げる様にくるりと体の向きを変えて。手がドアノブに触れた時。
がしっと手首を掴まれて背後から「待て、」と声が聞こえた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2381人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
空梅雨(プロフ) - ハルカさん» わざわざ教えて下さってありがとうございます‼︎読んできますね( * ॑¯ ॑*)ꔛ♥ (2022年10月11日 21時) (
レス) id: a04b728654 (このIDを非表示/違反報告)
空梅雨(プロフ) - ねろち。さん» ねろち。様コメントありがとうございます....!!! あの、私もねろち。様の作品読んでます... 素敵なお話ばかりで、全部好きです… 更新楽しみにして下さって本当にありがとうございます🥹💕 (2022年10月11日 21時) (レス) id: a04b728654 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ - 空梅雨さん» 更新ありがとうございます！！たすかるたすかる自分も小説書いています！ハルカで作者検索したら『ハルカ【遼花】』という名前が出てくると思います。それが自分です！でも、空梅雨さんの方が素晴らしい作品ですよ！！！ (2022年10月9日 22時) (レス) id: 900669addd (このIDを非表示/違反報告)
ねろち。(プロフ) - すごく ... すきです ... 🙏🙏文章の書き方とか心情の表し方がすごくすきです😭😭🙏次の更新も楽しみに待ってます💭 (2022年10月9日 18時) (レス) @page41 id: bb9a7b6c67 (このIDを非表示/違反報告)
空梅雨(プロフ) - ハルカさん» わわわ、夢主ちゃん好きと言って下さってありがとうございます😭ハルカさんも小説書かれてるんですか?是非読んでみたいです〜!参考になれるか分かりませんが、お言葉とても嬉しい限りです🙌✨応援ありがとうございます‼︎ (2022年10月9日 15時) (レス) id: a04b728654 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空梅雨
| 作成日時：2022年9月1日 20時
