逃げただけでした。#1

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「何かあったらいつでも言ってね、相談に乗るよ」


そう言い残した叶さんの後ろ姿を、私はぼんやりと眺めていた。




あの後、叶さんは何も聞かなくて。

それに何処かほっとした自分と、心苦しい自分、頭が上がらない自分がいた。ふと、私は自分自身に問い掛ける。





いつまで私は、周りに黙っていられる?








.........








帰宅早々、洗面所に向かった後。
ばたりと倒れる様に、ソファに疲労感が増した身体を預けた。


そのまま体制を変えて、顔を天井に向ける。
オフホワイトの壁を一瞬目に映してから、瞼を閉じた。






『＿＿＿＿＿＿くずは』






頭から離れてくれなかった。

意味もなく、天井に利き腕を伸ばす。
伸ばした手では何も掴めずに、ただ空を切った後、そっと腕を下ろした。







『ほんと、お人好し過ぎるよ......』







" 流石に見てられなくて。
何かあったか問い詰めても何も言わないし "







『ばかじゃん、』







私も、葛葉も。

ツーっと溢れたそれが、私の頬を少しだけ濡らした。







ふと、壁に飾ってあるカレンダーが視界に入る。

日付の下にはその日の配信内容と、仕事のスケジュールが書き加えられている。幼い頃からの癖だった。



その中から今日の日付が書かれた欄を見つけて、月末までの日数を数える。







『あと、1週間と数日か.......』






指を折って数え終われば立ち上がってぺらり、と来月のカレンダーを捲る。日付の下の欄は真っ白なままだった。





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