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丁度、廊下の突き当たりまで来れば。
進めていた足を一瞬止めて、左右を見渡して。
直ぐ自分の横に、" 非常階段 " と大きめの文字で貼り紙されたドアを見つける。力を込めて、ドアを押し出した。
ほんとは、マンション内なら音が響かないようにゆっくりドアを閉めるべきなんだと思うけど。
そんな事を気にする余裕もなく、ドアを開けた直後に階段を降りて行った。とにかく、その時は必死で。焦っていたんだ。
「Aちゃ、待って...!」
不意に、背後から。私の足音の合間に、そんな声が聞こえて。え、と意識がそちらの方に逸れてしまったんだ。
あ、と気付いた時には遅かった。
ガクン、と足元が抜ける感覚がして。
手すりを掴みそこなった、腕が空を切った。
やばい、落ちる___‼︎
そう頭で理解するのと同時に、覚悟を決めて目を瞑った。
衝撃が、走るはずだった。
腕をぐい、と引っ張られる感覚。
身体のバランスが崩れて、真っ逆さまの状態から引き戻されて。とん、と私の背中が誰かに当たった。
前に倒れそうに、落下しそうになっていた状態から。
踏み止まって、何故か私は突っ立っていた。
「っ、はあ.......」
至近距離で、すぐ後ろで誰かの息が上がっていた。そして私の腰辺りに、腕が回されている。真っ白で、細い手だった。
私の背中にピッタリとくっ付いているのは、誰かの身体だった。____違う、誰かなんかじゃなくて。
「_____っ、大丈夫?」
Aちゃん、と呼ぶその声で。恐る恐る、振り返った。
身体ごと彼の方を向けば。ゆっくりと、その腕は下ろされる。か細い声で私も、まふくん、と。彼の名前を呼んだ。
鼻の奥がツン、とする。あ、やばいかも。
そう思うのと同時に、じわり、涙が浮かんだ。理由なんて、分からなかった。
「Aちゃん....?」
頬を滑り落ちる涙で、私の視界は滲む。
こんな顔見られなくない。そんな理由で唇をキュッと噛んで、俯いた。
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空梅雨(プロフ) - 肴さん» わーー!!名前のミスすみません!!ずっと気付いてなかったのでほんとに助かりました...!!それと更新停止ほんとにすみません、、最近になってようやく続きを書いてるところです、、(最後になりましたが)お話読んで下さってありがとうございます...!! (2023年3月1日 13時) (レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
肴 - めちゃくちゃ面白いです……。大好きです。途中2話ほど「叶恋」さんになっていた所がありましたので一応……。一気読みして最後え!更新停止!?とめちゃくちゃ驚きました。更新ゆっくりと楽しみにしています、 (2023年3月1日 5時) (レス) @page50 id: d8a709d348 (このIDを非表示/違反報告)
空梅雨(プロフ) - LiLiKaさん» タイトルも含めお話自体がなかなか共感しにくい内容かなあ、とたまーに後悔したりしなかったりなのですがそう言って頂けてすごく嬉しいです....!!ありがとうございます🙏🏻 ̖́-励みになります....!! (2023年1月13日 23時) (レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
LiLiKa(プロフ) - P活系に抵抗があって今までどの作品も読んでなかったんですけど、一気読みしちゃいました!作品もすごく魅力的なんですけど、私みたいなP活女子に抵抗あっても読んでるうちに共感したりとかあって、これからの見方も変わりそうです! (2023年1月11日 12時) (レス) id: 0d7a09bcbc (このIDを非表示/違反報告)
空梅雨(プロフ) - 千々さん» わ〜!ここまで一気読みして下さってありがとうございます…!!私の拙い文章で感情移入できました、なんて身に余るお言葉です🤲🏻´-更新頑張れそうです、ほんとにありがとうございます! (2023年1月2日 22時) (レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空梅雨 | 作成日時:2022年6月20日 9時