レグアナ魔法学校のファンタジア。【歌い手】

24話 ページ25

みんなで駄弁っていると、徐々に人が集まり出した。



眠っていない為、大分早く講堂に来たのでその時は96猫校長以外人がいなかったのだ。



「お、怖い？」



騒がしく中に入ってくる生徒達を見て、さりげなく天月くんの後ろに隠れたAちゃんは「ちょっ、とだけ…」と言ってはにかんだ。



因みに彼女は絶対に声を出してはいけないわけじゃない。



全部ボクのファンタジアに頼ってしまっては、これからも威力の調整も、オンオフの使い分けすらできないからだ。



だから少しずつ、言霊に引っかからない単語なら積極的に口に出していこうというセンラさんの提案に、彼女も嬉しそうに笑っていた。



声を出す事をずっと制限されていたのだ。多分、尋常じゃないくらいストレスになっていたのだろう。



「あ、おはようA。」



ボクもそらるさんを盾にしようかな、なんて考えていた時、聞き覚えのある優しい声が聞こえた。



振り返れば、ニコニコと笑顔を浮かべた、狐のお面に和服姿の歌詞太郎さんがこちらに近付いてきていた。



「ぁ、かした、ろうさん」



Aちゃんが嬉しそうに言って天月くんの背中から出てくると、歌詞太郎さんはふにゃりと頬を緩めて、



「…久し振りにAの声聞いたなぁ。うんうん。ちょっとずつ慣れてけばいいよ」



そう言って歌詞太郎さんはAちゃんの頭を撫でると、ボクと坂田の方を見た。



「二人も、よく寝れたかな？『ファンタジア』に入るのは、勇気がいたんじゃないかな」



「生憎、一睡もしてませんよ……でも、そらるさんに助けられた時に絶対にこの人のグループに入るって決めましたから。」



ボクの言葉に、歌詞太郎さんはお面の奥で驚いたように目を見開いたが、やがてその目を閉じて何度も頷いた。



「流石、『選ばれた人間』だね。『ファンタジア』の名に恥じない生き方だと思うよ」

25話→←23話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す