監視下 ページ18
涼介side
す「仕事いってくる。………蝉、行くよ」
経験が一番。
そう言われ、ここにきた次の日から………母さんの仕事についていくのが当たり前になった。
たくさんの死体と、流れるように仕事をこなす母さんを見て、母さんにバレないように泣いて。
………血まみれの死体が、あの日の姉さんに重なって……どんどん、気持ち悪くなる。
それに………
涼「まっ………っ、ぅ…」
………今日は朝から…発作が続いている。
何回か吐いたけど、目眩も治まらなくて。
す「早くして、時間ないのよ」
フラフラ歩く俺を、こんな風に急かしてくるこの人を……親だなんて思えないし、思いたくない。
桐「気を付けていけよー」
す「分かってるわよ。…………あ、そうだ桐沢」
治まらない目眩と吐き気と戦い、えずきながらも玄関に向かう俺。
前にいた母さんは突然足を止めたかと思えば………振り返って、桐沢さんにこう言った。
す「この子がいた施設を監視下に置きたいわ。この子が何を言ってるか分からないもの」
………え……………?
玄関で靴を履こうとしたまま…………その言葉に、思わずピタリと動きを止める。
施設を………監視下に…?
…ダメだ、そんなの……!
輝希の皆は………皆だけは、巻き込みたくないのに…!!
咄嗟に母さんの方に向き直って、吐き気も忘れて訴えた。
涼「っ俺、何も言ってないよ…?過去のことは何も話してないし、家族の話も出してないから……だから………!」
…けど。
す「…………逃げた奴の言うことなんて誰が信じると思ってんのよ」
母さんは冷めた目で俺を見据えたあと、桐沢さんに黒い物体を投げた。
………………盗聴、器……
桐「俺に行けって?」
す「私は顔が割れてるわ」
桐「……ったく…りょーかい」
涼「まって、桐沢さ……っ」
す「うるっさい」
どうしても輝希の皆に接触されるのが嫌で、腕をつかもうとした……けど。
母さんが思い切り俺の腕を捻り上げたせいで……漏れたのは情けない呻き声だけ。
涼「い"っ………ぁ……」
す「最初っからねぇ、あんたがこの世界から逃げようとしなければ済んだ話なの。自業自得よ」
……こればっかりは、その通りだと思った。
俺は……この世界の人間。
そもそも俺みたいな人間は、あっちの世界には行っちゃいけなかった。
そんなことしなければ、こうやって皆を巻き込むことだって……無かったんだ。
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楠木りずむ(プロフ) - 柑橘類。さん» 嬉しいです……!!こちらこそ読んでいただき、コメントまで感謝です!ありがとうございました!m(_ _)m (2019年11月10日 9時) (レス) id: 9a431af939 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘類。 - 初コメ失礼します。今更ながらではありますが、完結おめでとうございます!輝希の皆の温かさや、幼い山田くんの苦悩と決意に泣かされました…どの小説よりも大好きな作品です。書いてくださりありがとうございました! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 8dd377e6cf (このIDを非表示/違反報告)
楠木りずむ(プロフ) - JUMPLOVEさん» こちらこそ読んでいただき感謝しかないです!ありがとうございます!!! (2019年11月8日 13時) (レス) id: 9a431af939 (このIDを非表示/違反報告)
楠木りずむ(プロフ) - 眼鏡っ子さん» ありがとうございます♪実は掛け持ちをしておりますので、ぜひそちらも覗いてくださいな…(しれっと)ありがとうございました! (2019年11月8日 13時) (レス) id: 9a431af939 (このIDを非表示/違反報告)
楠木りずむ(プロフ) - かのさん» 嬉しいです!ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(__)m (2019年11月8日 13時) (レス) id: 9a431af939 (このIDを非表示/違反報告)
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