養護施設 “輝希”

不在の時に ページ29

宏太side



光「…じゃ、行ってくる。家のことは頼んだ」

宏「おう」

光「涼介、飯だけ頼むな？」

涼「うん、任せて」


今日は、久々に光が不在。

いつも家事は結構やってくれてるから…今日はそれを分担してやらないといけない。


侑李と圭人は伊野尾と買い物に行ってくれてて、大ちゃんと雄也は洗濯物。

ご飯は、光の手伝いをよくしていて、料理が得意な涼介にお願いして。

裕翔は、お風呂掃除をしてくれている。

俺は、いわば皆の雑用係。
「薮に家事は極力やらせたくない」と、光に言われたからだ。


………俺一応、施設長なんだけどな……



慧『あ、もしもし？』

宏「おう、どうした？」


…しばらくして、買い物組の伊野尾から連絡があって。

あんまり普段電話なんてされることがないから、スマホがなったときは少しドキッとしたけど……


慧『実は……侑李がいなくなっちゃって』

宏「いなくなった…！？」


……嫌な予感ほど、当たってしまうもの。

少し不安げな伊野尾の声と、「侑李ーっ」と電話の奥で聞こえる圭人の声。

…マジか……もしなんかあったら…！


大「洗濯終わったよー」

雄「……なんかあったの？」


タイミングよく戻ってきたふたり…そして、それと同時に鳴り響く、施設の方の電話。

雄也が電話に出てくれている間に、とりあえず伊野尾に、圭人を落ち着かせるように頼んだ。


雄「もしもし。……はい、そうですけど………え、侑李？」


……聞こえてきた“侑李”の名前。明らかに曇る、雄也の表情。

心臓が…嫌な音をたてる。

「すぐいきます」と電話を切った雄也は……


雄「侑李が……警察に補導されてるって。……多分侑になってる…」

そう言って、険しい表情で俺を見た。

………そういうことか…

途中で伊野尾たちとはぐれたのは、侑李が侑になっちゃったから……

宏「…………伊野尾、聞こえた？侑李の場所は分かったから。お前たちは早く帰ってきな」

慧『…分かった…ごめん、俺が見てなきゃなのに』

宏「いや……今回はしょうがないよ」


気を付けて、と言って電話を切った俺は、すぐに上着を羽織る。

大「俺も行く」

同じく上着を羽織る大ちゃんに、俺は頷いた。

……正直、侑相手に一人はキツい。

宏「雄也、お前は……」




………バタッ…


今度は………台所から聞こえてきた、嫌な音。


言いかけた言葉を飲み込んで、急いでキッチンに向かえば………

目を瞑って呻き声をあげる涼介が、倒れていた。

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