養護施設 “輝希”

親なんか ページ17

大貴side



大「ただいまー！」

慧「疲れたぁ…」


………夕飯の買い物から帰ってくると、控えめな光くんの「おかえり」が聞こえてきた。

いつもと違う様子に、伊野ちゃんと顔を見合わせて靴を脱ぐ。



雄「あっ、有岡くん伊野尾くん！ふたりもここでカップケーキ食べよう！ね！ここで！」

慧「……カップケーキ…？」


リビングに来て早々、待ってましたと言わんばかりに高木がそう言ってきて。


………みると、高木と薮くんは少し気まずそうにカップケーキを食べていた。


ふたりの目の前には………涼介と侑李。
いや、あの目付きは………侑李じゃないな…？


慧「……そういうことね」

高木が“ここで”という言葉を強調していたのも、少し納得。


……確かに、居づらい。


仕方ないので、俺らも並んで座り、置いてあったカップケーキに手を伸ばす。

裕翔と圭人は、部屋に避難したのかな…？

光くんがいないあたり……ふたりを見てくれてるのかな。


涼「おいしいね、侑」

侑「黙って食え」

涼「おいしくないの？」

侑「………」

涼「……おいしいでしょ？」

侑「………ん」



……小さく頷く、侑。

恥ずかしくなったのか……乱暴にテレビをつける。

その様子を見て、涼介は少し満足そうに笑った。


俺らがあんなことしたら絶対にキレられるのになぁ………
と思いながら、流れでテレビをボーッと見ていると……流れてきたのは、シングルマザー特集で。


…………やべ…

ドキンと、心臓が跳ねる。


宏「あ……」

侑「………チッ」


………こういう話題は、少しデリケートな子供たち。

侑李はかなり不機嫌そうに、つけたばかりのテレビを消した。

涼介の笑顔も、少し固くなっている気がする。


侑「……何がシングルマザーだ」

涼「………」

侑「親なんて無責任なもんだろ…うっぜぇ」


………これは侑李の本心なのか、それとも侑がただ思ってることなのか……それは分からない。

だけど……なんとなく、本心な気がした。


……育てきれないという理由で捨てられた侑李が、無責任だと思ってしまうのも、なんだか納得しちゃって。

だからこそ、何も声をかけてあげられなくて。


侑「…子供を拒絶するような親なんか……生んだくせに捨てる無責任な親なんか、死んじゃえばいい」


そう言い放った侑李に……………誰も何も言えなかった。






………………ある、ひとりを除いて。

変→←カップケーキ

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