包まれたのは ページ40
暗い穴に落ちる。この浮遊感が懐かしい。何も出来なかった自分に最後まで腹が立って仕方がなかった。
しかしどれだけ経っても衝撃は来ず、暖かく柔らかい何かに包まれているのに気付く。
暗闇から一変、穴から抜け出したのか光が見えてきた。私が柔らかいと感じていたのは、金色のやけに毛並みのいい狼であった。狼はボロボロの私を気遣うように地面に下ろす。透き通ったブルーアイ。これは、
「コネ、シマさん…?」
見間違うはずがない。コネシマさんはそれに返事をする訳でもなく私の前に守るように立つ。
「よくやったコネシマ。」
廃墟に響くバリトンボイス。その声の先を見たケーニヒと私は「グルッペン・フューラ」と同時に声を漏らした。そこには黒いマントをはためかせたグルッペンが立っていたのだ。
「新人二人を虐めてくれたようだな」
グルッペンは愉快そうに目で弧を描く。
「まさか総統直々に来ていただけるとは…!早くて助かる。グルッペン…貴様はここで、終わりだ!」
「ハハ。元気がいい。一つ、愚かなお前に教えてやろう。」
「…何だ?」
「俺達は確かに内ゲバが大好きだが、仲間を見捨てる気などさらさらないゾ。お前がAの死体を偽造したのなんて最初から分かりきっていた。」
パチン、と彼が指を鳴らすと私の側の窓が割れ人影が飛び込んできた。
「ったく、人使いが荒いんとちゃうか」
窓を破って飛び込んできた人物を見て私を目を開く。
「──トントンさん!」
トントンさんは床に転がる私を見て複雑な表情を浮かべる。
「トントンさん、何でここに…?」
「助けにきたに決まっとるやろ。隊員守るんが隊長の仕事や。そんで…」
彼は言葉を続ける。
「馬鹿なことした隊員を始末するんも俺の仕事やもんな…!」
殺気立ち、剣を持つ彼を見て鬼神と呼ばれる理由が分かった。その視線の先にはケーニヒ。
「なぜ、書記長まで。一体あいつらは何をしてるんだ…!!どいつも、こいつも!!」
「仲間に対し随分な物言いだな。そうだトン氏のせいで忘れるところだった。ケーニヒ。お前に土産だ」
総統が投げたのは、ケーニヒの身につけているものと同じ腕章だ。
「な…これは!」
それもいくつもあり、床に腕章が散らばる。それはケーニヒの創り上げた国の幹部である証であった。ケーニヒはありえないと声を震わせる。
「お前たちにとって最も戦いにくい相手を選んだはずなのに、何故だ!!」
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鳩山(プロフ) - えみさん» コメントありがとうございます。懸命に生きる2人と彼らの話を素敵と言っていただき本当に光栄です…!最後までご愛読ありがとうございました! (2021年2月20日 16時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
えみ - rbr推しですがshaちゃんとくっついて欲しいと思ってしまう程の作者様の文才に引き込まれました…!とても素敵な話でした! (2021年2月19日 17時) (レス) id: 1597543406 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ブンブンさん» ブンブンさん!以前もコメントして下さいましたよね?本当ありがとうございます…!良かったら番外編でもよろしくお願いします…!最高に嬉しい言葉を本当にありがとうございました! (2019年11月11日 0時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ブンブン(プロフ) - 完結おめでとうございます!貴方の作品に出会えて本当に良かったです! (2019年11月10日 23時) (レス) id: 4a511d68cf (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - kogarashi343gooさん» コメントありがとうございます!本当に嬉しいお言葉ばかりで私からも感謝させてください!すごく励みになります…!今後は番外編然り、別作品然り、更新頑張っていくつもりですので今後ともよろしくお願い致します! (2019年11月10日 22時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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