閉ざした未来 ページ34
目を覚ますとそこは、コンクリートは塗装が剥げて剥き出しに、窓ガラスは所々ヒビが入って散らばっている廃墟であった。
また、捕まったと弱い自分に溜息をついてしまう。
「目ェ覚ましたん？」
陰湿な場所には似合わぬ嬉々とした声。顔を見なくとも誰のものかすぐに分かった。
「チーノ…」
「せやで〜俺やで！」
ニコニコと笑う男に怒りが湧く。動こうとして、やっと自身の手足が縛られていることに気付いた。
「暴れてもらったら困るから縛らせてもらたで〜。あと助けが来るなんて馬鹿なこと考えたらあかんよ？あんたは死んだことになっとるし」
どういうことだ、と私の心の声が聞こえたかのようにチーノは続ける。
「あんたにそっくりな影武者の死体を用意したんよ。今頃幹部はあんたの葬式でもやってるやろな〜。誰からも見つけられない可哀想なAちゃん。大丈夫やで、俺が…いや俺たちがそんなあんたを救ってやるからな！」
瓶底眼鏡の奥からオレンジジルコンが輝く。
「ばっかみたい！誰が、チーノ何かっ…！」
何か言い返してやろうとしていれば、廃墟に自分達以外の足音が聞こえてきた。まさか、幹部が助けに？と一瞬淡い期待が過ぎる。
「はっはっはっ。チーノ君。新人候補を虐めてやるな。」
しかし現れたのは、決して忘れることのない男だった。
「！」
「また会ったな。我々軍幹部のAさん。」
「ケーニヒ…！」 「ケーニヒ様」
「前回はお嬢さんの能力を知らなかったからね、酷いことをしてしまったよ。」
「思ってもないくせに…」
「いいや。本当さ。私が浅はかだった。私は、価値のある人間は大事にする質なんでね。」
ケーニヒは冷ややかな嘲笑う様に鼻を鳴らす。
「君が仲間になってくれると言うのなら君の言うことを一つ聞こう。我々に手を出すな、と言うのならば今すぐにでも休戦するさ。」
「嘘つき、」
「本当さ。でも逆を考えてごらん？君がイエスと言わなければあの軍は終わりだ。幹部も次々と倒れている。残る幹部達の元にも、私の仲間が直々に挨拶しに行ったからな…果たして何人が生き残れるか。」
クツクツと笑ったケーニヒは私の頭元へ屈み、髪の毛を引っ張る。
「っ」
「どうせお前は最後には俺に服従することになる。せいぜい"お友達ごっこ"を楽しむんだな。」
声色の変わった男。乱暴に私の髪を離すと「チーノ。こいつの監視はお前に任せた。」と言い残した。
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鳩山(プロフ) - えみさん» コメントありがとうございます。懸命に生きる2人と彼らの話を素敵と言っていただき本当に光栄です…！最後までご愛読ありがとうございました！ (2021年2月20日 16時) (
レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
えみ - rbr推しですがshaちゃんとくっついて欲しいと思ってしまう程の作者様の文才に引き込まれました…！とても素敵な話でした！ (2021年2月19日 17時) (レス) id: 1597543406 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ブンブンさん» ブンブンさん！以前もコメントして下さいましたよね？本当ありがとうございます…！良かったら番外編でもよろしくお願いします…！最高に嬉しい言葉を本当にありがとうございました！ (2019年11月11日 0時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ブンブン(プロフ) - 完結おめでとうございます！貴方の作品に出会えて本当に良かったです！ (2019年11月10日 23時) (レス) id: 4a511d68cf (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - kogarashi343gooさん» コメントありがとうございます！本当に嬉しいお言葉ばかりで私からも感謝させてください！すごく励みになります…！今後は番外編然り、別作品然り、更新頑張っていくつもりですので今後ともよろしくお願い致します！ (2019年11月10日 22時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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