【d!】続落ちた先には…【異能パロ】

真実を突き付ける君 ページ15

怪我人達へ今できる治療をしてトラックへ移動させる。全員が乗り終えたのを確認し私達も出発しようと、ショッピさんの運転する車に乗り込もうとすれば兄さんに引き止められた。

「ちょっとA借りてええか？」
「はぁ。大丈夫っすけど」
「A、兄さんに迷惑かけたらあかんで！」
「かけません！」

二人に見送られながら兄さんの運転するトラックの助手席に乗り込む。口数の多くのない兄さんに緊張している私の様子がおかしかったのか、彼はクツクツと静かに笑い出す。

「取って食う訳ちゃうからそんな緊張せんでええで。」
「す、すみません…。それにしてもどうして私を？」
「少し話したいことがあってな。」
「話したいこと、ですか」
「グルッペンから大体のことは聞いたが、ちょっと疑問な点があってな」
「疑問って…」
「Aが落ちた時…それからまた穴が出現した時のことや。第一発見者は両方大先生やったんやろ？」
「私はそう聞いてます」
「…Aは大先生の異能を知っとるか？」
「知らないです」

そうか、と兄さんはここで会話を終わらせる。まるでその言い方だと大先生が私をこの世界に連れてきたみたいだ。

「まさか大先生って別世界に行けたりするんですか？」
「それはないと思うで…。まああいつの異能は俺らでもよう分かっとらんから言い切るのは難しいけどな。グルッペンだけは知っとるみたいやけど」
「でも、たまたまなだけで大先生はそんな…」
「俺はAがこの世界に来たことはただの偶然とは思わない。」

ガタンとトラックが揺れる。兄さんは相変わらず前を向いたままだ。

「え…、」
「お前がこの世界に来たのは、確実に鬱が関わっとる。」

まだこの世界にきて時間は短い。やっと慣れてきた生活を壊すようなことをこの人は平気で言い切る。

「でも、え？何のために…」
「それは知らんな。」
「知らないって根拠がないことを言わないでくださいよ。冗談でもきついです！」
「……せやな。」

ははは、と私の空笑が車に響く。兄さんは私の気持ちを察してかこれ以上話を続けることはなかった。
日が明け始めた頃、見慣れた基地と先に着いた二人が見えてくる。

「兄さんは総統に会わないのですか？」
「特別会う用事もないしな。そうやA」
「はい」
「これ御守り代わりに持っとけ」

兄さんが投げたのは銀色の小さなホイッスル。

「もしピンチの時はそれを吹くとええで」

そう言った兄さんは幹部に会いもせずトラックに乗り基地を後にした。

任務達成→←自由の為の選択肢

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