【d!】大好きだから、さようなら【軍パロ】

漆黒と彼女 ページ27

幸せとは、何も一時的な快感や喜びを表す激情ではない。グルッペンは、幸せとは？と自身に問う目の前の彼女にこう答えた。幸せとは、───「変遷」であると。


「移り変わっていくことがグルッペンさんにとっての幸せなんですか？」
「あぁ。そうだ。不変なんてつまらないからな」
「そういう考え方もあるんですね」
「変わるということは進化だ。人間らしく言えば成長だな。俺はそんな人の成長を見るのが好きなんだ」

Aは彼らしい回答に微笑む。

「いつも皆さんを見ているグルッペンさんだからこその言葉です。私はこの組織に置いていただけたことが本当に幸せでした」
「おい、何で過去形なんだ？今後とも幸せですって言わんか」
「ふふっ」
「笑って誤魔化すんじゃないゾ。全く…」

どこか子供らしい彼は不機嫌そうに唇を尖らせる。

「私はみなさんが幸せでしたらいつだって幸せですから」
「お前はいつまで経っても変わらないな」
「グルッペンさんに昔言われたこと、今なら分かるんですよ」
「俺はその時、何と言ったんだ？」

Aを少し考えて、「秘密です」と笑った。いつもと同じ彼女なのにどこか謎めいている。そんな彼女を見てグルッペンは違和感を感じてしまう。

「グルッペンさん。私、皆さんの幸せを願ってミサンガを作ってきたんです。これを受け取ってくれますか？」
「…いただこう」

グルッペンは自らでそれを足首に結んだ。

「願いを込めながらつけると効果があるんだったか」
「うん、そう言われてます。何か叶えたい願いがあるんですか？」

Aの質問に彼は鼻で笑うだけ。一瞬窓の外に目を向けた彼はそのまま口を開く。

「お前の幸せとは俺達の幸せを願うことなのだろう？それならばお前自身の幸せはどうするんだ」

突然の彼の質問にAは言葉が詰まった。
なぜならA自身にとっての幸せが彼らの幸せだったからだ。もう一度説明しようとすると、グルッペンはすぐ近くまで来ていてそっとAの唇に自身の指を一本つける。

「A、お前はいつだって人の為に生きているな」
「……？」
「別にお前の生き方に口を挟もうなんては思ってはいないが…あいつのこともある。少しだけ助言をしてやる」

グルッペンは「お前が人を思っているように、お前のことを想っている人のことをよーく考えるんだな」

Aの唇に当てられた指が頰を撫でて、さらには頭に乗っかる。Aは暖かいその手を自身の手に重ねて「そう、ですね」と笑うのだった。

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