それはまるで夢のよう ページ6
訓練が終わる頃には日が暮れ出していて夕景となっていた。隊員へ解散を告げるとちょうど隣で第二機動部隊も解散していたらしい。シャオロンにお疲れ様と声をかけると彼はこちら向けて手を振って応えてくれた。
触れるか、触れないかぐらいの距離で歩き続ける。あんな夢を見たからか余計に胸がドキドキと高鳴っている。
「いやぁ、まさかあそこでAがキレるとは思わんかったな」
「だってショッピくん私のことゴリラって言ったの」
「事実やんか」
「は?」
「すんません。嘘やから俺の首に当てた毒針下ろしてもらえませんかね。」
「他に何か言うことは?」
「Aさんまじで綺麗っす!惚れ惚れするっす!」
「うん。まあ、許してあげるよ」
軽口を言い合いながら笑っていると、彼の足が止まる。ふと疑問に思って彼に続くように私も足を止めた。夕焼けに染まった彼の頰は真っ赤で…
「さっき言ったことは冗談やないで。俺、Aのこと好きや」
「え…?」
それは二度目の告白だった。少し言葉は違うが、確かにこの道で、夕景の中、私は彼に告白された。そして私はそんな彼の告白を冗談だと笑ったのだ。それが彼と話した最後の言葉になった。夢の中で私はどれだけ後悔したものか。今度こそきっと神様がくれた最初で最後のチャンスだ。しかしなぜか"私も好きだよ"とたったそれだけなのに、その言葉が素直に出てこない。
「シャオロン、あの」
「って冗談に決まっとるやろ!罰ゲームや!罰ゲーム!」
「は?」
「いや、怖っ!コネシマ達とゲームして負けたからな〜!くそ!俺的にはえろ小僧にこそ罰ゲームをさせたかったのに」
考える私に気を遣ってシャオロンが笑って吹き飛ばした。夢の中では安心してしまっていたが今の私は違う。笑って吹き飛ばす彼が痛々しく感じてしまったのだ。
──もう後悔はしたくない、と私は無意識に彼へ手を伸ばしていた。
「わたしも、好き」
茜色の日差しのせいか、熱のせいか彼の顔は真っ赤であった。その言葉を伝えると目の前は真っ暗になり暖かい体温に包まれる。
シャオロンに抱きしめられたと理解するのに数秒を要した。
「はは…めっちゃ嬉しい」
上から声がしてそっと顔を上げると口元が緩んだシャオロンがいた。
「私も嬉しいよ」
きっと彼と同じような顔を私も浮かべているに違いない。瞳に熱を篭めて見つめてくるものだから恥ずかしくなって彼の胸を押した。
「早く夕飯食べに行こう?」
夕景の中、彼と手を繋いで基地へと戻った。
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白いろきつね。(プロフ) - 今更ながらに読ませていただきました すごい心を持っていかれるお話で涙腺が崩壊しながらも読ませて貰いました ループで心が壊れていく夢主さんを見ていて感情移入しちゃって、本当に心を揺さぶられる最高の作品でした。主様書いて下さり本当にありがとうございました! (2021年8月11日 0時) (レス) id: 02f1a6e36f (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 菜乃さん» コメントありがとうございます…!死に戻りは私の性癖でして、設定好きと言われて喜んでます。この作品はお気に入りの一つなのでコメント頂けて幸せです。こちらこそありがたいお言葉をたくさんありがとうございました。またどこかでお会いできることを願っております (2020年6月27日 19時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ・ちょこみんとさん» コメントありがとうございます…!流した涙がもったいないですよ(そっとハンカチを差し出す)本当に素敵なお言葉をありがとうのざいます!ちょこみんとさんからの言葉で今後も文字書きとしてやっていこうと思います。ありがとうございました…! (2020年6月27日 18時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
菜乃(プロフ) - 今更ながら一気に読ませていただきました…!めちゃくちゃ号泣しました…!このお話設定やストーリーも鳩山さんの文字の書き方も全部が好きで勢いでコメントしてしまいました…。素敵な作品をありがとうございました!! (2020年6月27日 15時) (レス) id: a5b7bd47a4 (このIDを非表示/違反報告)
・ちょこみんと - 全話一気に読まさせて頂きました!涙がボッロボロに出ました…感動します…鳩山さんの作品が大好きです!これからも頑張って下さい! (2020年6月27日 15時) (レス) id: 87dd4c4135 (このIDを非表示/違反報告)
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