【d!】君の顔も見たくない【軍パロ】

明日 ページ47

「……っ…？」
「…馬鹿野郎…っ」

ぎゅう、と体に圧がかかる。あまりの強さに窒息してしまいそうだ。

「…ほんまに、…お前は、ばかやろうや…っ」

グズグズと鼻を鳴らすのはシャオロンで間違いない。私はまだ言うことのきかない腕を無理矢理従わせて、彼の胸を押す。弱々しい抵抗であったが、シャオロンはすんなりと拘束を解いた。

彼の顔はお世辞にも綺麗とは言い難い。所々傷があるし何より琥珀の瞳は滲んでしまっていた。瞼と鼻は痛々しいほど真っ赤だ。

何度も何度も、ループしていく中で、彼の涙を私は初めてみた。

いつだって私は、涙を拭いてもらう側だったからだ。

「はは…不細工になっちゃってるよ…」

今度は私が、とどめなく流れる彼の涙を拭っていく。

「アホ…俺は、いつだって…イケメンや」
「冗談まで言えるなんてもう元気だね」
「うっさいわ…」

シャオロンへ微笑んで、隣から眩い日差しが差し込む窓に目を向ける。

「…あれ、」
「どないしたん？」
「外が……今って何時？」
「8時や」
「夜の…？」
「朝の。1月15日の、な」
「…明日が、きた…」
「そうや。待ち望んだ"今日"が来たで」

シャオロンは、くしゃりと顔に皺を寄せて笑う。
私が、どれだけ今日を望んでいたことか。
しかし私はシャオロンが待ち望んだという言葉が引っかかる。その言葉はまるで、彼もタイムリープしていたみたいな言い方だ。
私が困惑しているのを感じ取ったのか、彼は笑ったまま「俺もタイムリープしとったんやで」と何でもないように言った。

「………はぁ！？」
「うわっ、いきなり大きな声出さんといてや。びっくりするやん」
「いやいやいや、そうじゃなくて…えっ？シャオロンまでタイムリープしてたの…？」
「せやで。コネシマから詳細は聞いた。お前もお前で頑張っとったんやな」
「…シャオロンも、頑張ってくれていたんだね」

言わなくたって分かる。私達はお互いにお互いの死を回避しようと必死になっていたのだ。二人とも、ずっとずっと互いが生きた"今日"を目指して。

「なあ、A。今度こそ俺の気持ち聞いてくれるか」
「…もちろん」
「俺、Aのこと好きや。」
「私も、シャオロンのことが好きだよ」

何度目かの告白であった。私達はお互いに気持ちを知っていた。でもやっと伝えられたのだ。

「こんなに、幸せでいいのかな…」
「あんだけ神様に意地悪されたんやから、その分幸せになっていいに決まっとるやろ」

彼らしい言葉に、また私は救われた。

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